敵は観光キャンペーン…小規模施設「客来ない」 助成対象外れ、見込めた客は大型ホテルへ


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おきなわ彩発見キャンペーンの特設サイト

 新型コロナウイルスで打撃を受ける観光業の需要回復対策として、沖縄県民の県内旅行促進を目的に県が旅行代金の一部を助成する「おきなわ彩発見キャンペーン」への予約が殺到している。既に沖縄ツーリストは受け付けを終了するなどの盛況ぶりだ。一方、今回の助成対象である県内旅行会社と取引がない小規模宿泊施設などからは、「キャンペーンが始まったことで、本来見込めたはずの県内客が全く来なくなった」との声も上がっている。

 JALJTAセールスは9日時点で、1700人の申し込みが来た。1人でこなしていたメールでの申し込み受け付けを、5~6人に増やして対応している。担当者は「ここまで反響があるとは思わなかった」と驚きを隠さない。

 宮古、石垣、久米島など複数の離島をまたぐプランを立てて商品を購入する人もいる。JTB沖縄によると、高級ホテルの1泊2食付きのプランが人気だ。

 キャンペーンで県が用意している予算は5億円。キャンペーン期間は7月末までという設定だが、県の担当者によると6月中には予算を使い切りそうな勢いだという。

 今回のキャンペーンは県内にお金が落ちる仕組みにするとして、「県内に本社があり、旅行業の登録を受けた事業者」が参加条件となっている。

 一方、民泊などの小規模宿泊施設は、県内の旅行社ではなく、国内外大手のオンライントラベルエージェント(OTA)を販売ルートとしていることが多いため、キャンペーンの恩恵を受けづらい面がある。

 本部町で3室のコテージを経営する男性は「小規模の施設をとりこぼしている。キャンペーンに参加しなければ、客が奪われて今まで以上に客が来ない状況になる」と指摘する。

 これまで楽天トラベルやエクスペディアなど県外、海外のOTAのみで商品を販売してきたが、慌てて県内旅行会社2社と契約を結ぶ手続きを進めている。しかし旅行社との契約は1~2週間はかかる見込みで「契約した時には予算がなくなっている可能性もある。追加の予算があることを期待している」と話す。

 キャンペーンの準備期間の短さもあり、県内旅行社も、これまで取引しているホテルなどで商品を造成するのが中心となる。那覇市内の旅行社の代表は「これまで取引がない施設は品質管理がどうなっているかなど、状況が分からない。今回のプランに入れるのは厳しい」と話した。

 民泊関係者は「多様な宿泊施設に支援を行き渡らせるべきだ」と訴える。
 (中村優希)