琉球王国表文を米で発見 中国皇帝宛てに清朝国語「満文」添付 識者「歴史書翻訳手掛かりに」


琉球王国表文を米で発見 中国皇帝宛てに清朝国語「満文」添付 識者「歴史書翻訳手掛かりに」
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 満州語(満文)文献学などに詳しい追手門学院大学(大阪府)の承志教授と、琉球史などを研究する沖縄大学の前田舟子准教授が、1756年に琉球王国が中国に進貢する際に作成した表文「琉球国中山王尚穆貢表(りゅうきゅうこくちゅうざんおうしょうぼくこうひょう)」の原本を、米マサチューセッツ州のハーバード大学内で見つけ、論文化した。中国皇帝に送られた琉球王国の表文は、多くが中国や台湾で保存されている。両地域以外の海外で見つかるのは初めて。識者は今回の表文が歴史文書などを翻訳する際の重要な手掛かりになるとみている。

米ハーバード燕京図書館に所蔵されている「琉球国中山王尚穆貢表」の封筒表(承志さん撮影、前田舟子さん提供)

 見つかった原本は、琉球王国側が作成した漢文に加え、当時の中国内閣が翻訳した満文の部分も添付される「満漢合璧(がっぺき)」だった。満漢合璧の原本史料が発見されるのも初めてという。中国・台湾所蔵の琉球王国関係文書を研究する、名桜大学の赤嶺守教授は「史料が満漢合璧の形で残されていた点に、琉球史研究にとっての重要な意義を見いだすことができる」と指摘した。

 今回発見されたのは、琉球国王が中国に進貢する際、必ず持っていく進貢の表文という。表文とは、属国の国王が中国皇帝に呈上する礼的忠誠を示す文書で、進貢の際に中国から携帯が義務付けられていたものと理解されている。

 承志教授がハーバード大のエリオット・マーク教授から2018年末に提供を受けた、未出版のハーバード燕京(えんけい)図書館所蔵の満洲語文献目録で、今回の表文を発見した。承志教授は琉球史の専門ではないため、前田准教授に史料価値の検証を託した。

 史料を検証・論文化した前田准教授は「ハーバード大での琉球史料原本の発見は、これまで行方知れずとなっていた中国皇帝宛ての文書が、世界中のどこかで見つかる可能性を示唆している」と話した。

 貴重な資料の発見について、承志教授は「満州語は清朝の国語であり、当時は国内外でとても重要な言語だった。琉球から中国へ送られた漢文文書がどのように満文に翻訳されたのかなど、その過程を知る上で重要な手掛かりになる」と述べた。(呉俐君)