辺野古で政府「曲解」の余地 緊張感増す玉城県政<薄氷の過半数 県議選の内幕>


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約2カ月止めていた工事が再開された新基地建設現場=12日午後1時すぎ、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 沖縄地方が梅雨明けした12日朝、太陽の光が照り付ける名護市の大浦湾は張り詰めた空気が漂っていた。「工事やめて」「ジュゴンを追い出すな」。小型船に乗った市民らの抗議をよそに午前8時20分すぎ、埋め立て工事に使う作業船2隻が辺野古の新基地建設現場にゆっくりと入ってくる。県議選の投開票から5日。沖縄防衛局は約2カ月止めていた工事を再開させた。

 工事再開の方針は投開票前から決まっていた。4月に工事が止まった理由は新型コロナウイルスの感染者が出たからだったが、自民党関係者は「県議選への影響も考えてここまで再開を見合わせていたのだろう」と話す。

 県議選から一夜明けた8日の会見で、菅義偉官房長官は辺野古新基地建設について「かなり理解が進んでいるのではないか」と語った。自民党県連が辺野古容認を掲げて初めて臨んだ県議選で、改選前の14議席(会派議員含む)から3議席を増やしたためだ。

 辺野古移設を進める理解は進んだのか。

 沖縄の選挙が全国的な関心を集めるのは、辺野古を巡って県と政府が対立を続けてきたことによる。これまでの選挙で政権が支援する候補が敗れた際、菅氏は反対の民意にかかわらず工事を進める方針を淡々と語ってきた。辺野古埋め立ての是非を単一争点とし「反対」が多数を占めた2019年2月の県民投票でも、菅氏は投票前から「粘り強く工事を進めていく」と強調。今回の県議選でも、前もって選挙結果は工事の方針に影響しない考えを示していた。

 「都合のいい一部の選挙結果だけを取り上げて『理解が進んだ』と言うのは曲解だ」。県議会与党幹部の一人は、菅氏の発言を批判する。

 とはいえ、選挙の結果、県政与党と野党・中立の勢力図は「25対23」と差が縮まり、玉城デニー知事の県政運営に厳しさが増したのは事実だ。今後の議長選びや新会派結成の中で与党議員の離反があれば与野党の構図が逆転する可能性もあり、玉城県政にとって足場固めが目下の課題だ。

 県庁内では「展開によっては、訴訟費用や(自民が問題視してきた)県ワシントン事務所の予算が削られるのではないか」(県幹部)との懸念も漏れる。

 辺野古新基地建設を巡る当面の焦点は、政府が4月に提出した設計変更申請に県がどう対応するかだ。玉城知事は「厳粛に審査をしていきたい」と話しており、当面は審査に時間をかける考えだ。

 与野党構成が、より伯仲する結果になり、現在1期目の玉城県政の後半期は、これまで以上に緊張感のあるものとなる。玉城知事は工事が再開された12日の記者会見で「県議選では辺野古移設反対が過半数の議席を占めた。県民の辺野古移設反対の民意は揺るぎない」と語気を強めた。

(’20県議選取材班)
(おわり)