【追跡】偽造クレカ摘発 狙われる国境県 「手っ取り早い」換金へ巧妙化


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 今年3月、マレーシア人男女4人による大量の偽造クレジットカード密輸事件が那覇空港で相次いで発生した。偽造カード密輸事件の摘発は県内初。沖縄地区税関の検査で発覚し、被害は確認されていないが、偽造カードの製造に用いる機械が本島北部の宿泊施設で押収されるなど、海外犯罪組織が県内で偽造カードを製造しようとしていたこともうかがえる。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、国内外と県内を結ぶ航空便やクルーズ船などは減便が続いているが、関係捜査機関は違法物品の密輸手口の巧妙化に警戒を強めている。

那覇空港の税関検査で発見されたマレーシア人が所持していた偽造クレジットカード(沖縄地区税関提供)

■1週間の旅行

 「手っ取り早い金儲けに興味ある人」「日本で1週間クレジットカード決済を行う仕事」。3月13日に逮捕された男(28)は4日に那覇地裁で開かれた公判で犯行に至った経緯を説明した。マレーシアでSNSを通じた求人内容に興味を持ち、依頼主から航空券と偽造されたクレジットカードを受け取ったという。依頼主からは「1週間の旅行でボスのために金を下ろしてほしい」などと伝えられ、報酬は帰国後に支払われる予定だったことを明かした。

 同事件の別の公判で、県外へ逃走していた被告(34)を「密輸組織の人間だ」などとする証言があり、マレーシア国内の犯罪組織から指示を受けた被告が犯行を主導していたとみられている。

 県警は偽造カードを用いて高額商品を購入し、海外で転売し利益を得ようとしたとみている。

■変遷

 沖縄を舞台に発生する密輸事件の物品や手口は年々変遷している。2015年には東京に拠点を置く暴力団構成員による金塊約110キロの密輸事件が発生したほか、16年にはヨットによる当時国内最大級の覚醒剤約600キロの密輸事件が発生している。

 金を密輸して国内で転売し消費税分の利益を得る手口は全国でも相次いだ。18年4月には改正関税法が施行され、金の密輸に対する罰金が5倍に引き上げられた。

■狙われる国境県

 税関関係者はこうした状況を念頭に「低リスクとされる違法物品の密輸が今後も出てくることが予想される。コロナの影響で現在は人や物の流れが少ないが、今後も国境県である沖縄を狙った密輸事件が発生する可能性がある」と懸念する。別の捜査幹部は関係捜査機関の連携強化を指摘し「観光立県を掲げるなら取り締まり体制の拡充も同時並行で取り組むべきだ。沖縄が犯罪の温床となることは絶対に避けなければならない」と強調した。

(当間詩朗)