「企業の回復策提供が使命」「観光客、まず台湾から開放を」県銀行協会・山城新会長<焦点インタビュー>


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ
県銀行協会 山城正保会長

 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、基幹の観光産業から波及し、県内の多くの業種で事業者が苦境に立たされている。企業の経営環境は急速に悪化し、県内金融機関には融資や返済条件変更の申し込みが相次ぐ。5月27日付で県銀行協会の新会長に就任した沖縄銀行の山城正保頭取に、収束後の県経済回復策や加盟各行に求められている事業者支援を聞いた。

 ―県内事業者を支援する具体的な策は。

 「協会として統一した動きはないが、会員各行がセーフティーネットの保証融資や無担保無保証の融資制度に積極的に対応している。企業が事業を継続できるよう支援し、全会員で倒産を防いでいきたい。資金繰り支援以外にも細ってしまった販路の拡大、M&Aや事業承継などの支援が求められ、各行が取引先に事業の回復策を提供することが使命となってくる」

 ―感染症で県民のライフスタイルも変化した。金融機関はどう対応するのか。

 「感染症に対するBCP(事業継続計画)が重要になる。コロナ前の状況に戻ることは想定しづらく、今後は『ウィズコロナ』の考え方で事業を進める必要がある。職員の安全を確保しながら、営業をする体制の構築が求められている」

 「来店しなくてもサービスが受けられる、キャッシュレスなどを加速度的に進めていかなければならない。ICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)を活用して、サービスを受けられる取り組みが必要だ。それがウィズコロナ時代の金融機関の生き方になってくる」

 ―県経済の立て直しをどう進めるべきか。

 「段階的に立て直すことになろうかと思う。まずは各観光団体が取り組む『おきなわ彩発見』など、県内消費を喚起する取り組みを支援することになる。航空会社も3密を避けるために搭乗人数を制限しており、元に戻るには時間がかかるが、国内観光客は徐々に戻ってくると思う」

 「豪州とニュージーランドの間で『トラベルバブル(近隣の域内旅行)』の議論が進められている。日本は一番近い隣の台湾から、まず門戸を開いていただきたい。台湾はコロナ対策では世界の中でも成功事例だ。すぐに一緒くたにインバウンドを受け入れるのではなく、まずは台湾のようにコロナ対策が進んでいるところから門戸を開くことは大事な考えとなる」

 「これまで入域観光客の数を求めてきたが、消費単価は低く、宿泊代金の過当競争もあった。感染症を契機に『量から質』への転換が必要だ。収益性を高め、企業体力をつけるためにも適正価格に戻し、しっかりとしたサービスを提供することが大事になってくる」
 (聞き手 池田哲平)