名護高ラグビー部 「一流の指導」をオンラインで導入 離島の「不利」を克服


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インターネット端末で練習風景を撮影する名護高ラグビー部のマネジャー。東京にいる臼井智洋氏がライブ中継を見ながら練習の指示を出す=8日、同高グラウンド

 名護高ラグビー部がオンラインを活用した新たな練習方法を取り入れている。指導に当たるのは名門早稲田大などでストレングス&コンディショニング(S&C)コーチを務めた臼井智洋氏(28)。今月部活動が再開して以降、グラウンドにインターネット端末を持ち込み、東京にいる臼井氏と中継をつなぎ、リアルタイムで体づくりの指導を受ける取り組みを始めた。宮城剛監督は「離島県の沖縄でも、いつでも、どこからでも一流の指導が受けられる」と沖縄特有の課題克服に手応えを語る。

 梅雨の激しい雨が降っていた8日午後5時ごろ、名護高を訪れた。グラウンドは、はだし姿で体幹トレーニングやパスワークの練習に励む選手たちで熱気に包まれていた。その両脇で2人のマネジャーがタブレット端末のiPadとスマートフォンでその様子を撮影。画面の向こう側からビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って臼井氏がライブ中継を見ながら、練習の指示を出していた。

ビデオ会議アプリ「Zoom」を利用し、東京から遠隔で練習を指導する臼井智洋氏 スマートフォンで東京にいる臼井智洋氏と練習内容を相談する名護高ラグビー部の銘苅信吾コーチ=8日、同高グラウンド

 新たな取り組みのきっかけは、新型コロナウイルスの影響による部活動の休止だった。休止期間中、チームはZoomをトレーニングに導入。名護高OBで外部コーチを務める銘苅信吾さんが早稲田大のヘッドコーチ時代にS&Cコーチだった臼井氏に依頼し、画面越しでトレーニングの指導を受け始めた。「ネットは場所を選ばない。これならグラウンドでもできる」と考えた宮城監督。休校期間中に衰えた選手の運動機能の回復やけがの防ぎ方など、好影響を感じている。

 臼井氏は、名護市で小中学生を対象とした「デイゴラグビースクール」も運営する銘苅コーチの「沖縄から日本一を目指す」という志に共鳴し、今回初めてという高校での指導を引き受けた。「国内全体のレベルを上げるためにも、遠隔で指導する動きが広まってほしい」と期待する。

スマートフォンで東京にいる臼井智洋氏と練習内容を相談する名護高ラグビー部の銘苅信吾コーチ=8日、同高グラウンド

 沖縄は離島県なため、これまで外部から指導者を招くには他県に比べ時間や費用がかさんでいた。オンライン練習について、銘苅コーチは「沖縄のような地方でも情報を仕入れやすくなった」と語る。

 チームは「花園でシード校を破る」という目標を掲げ、体格の大きな全国の強豪に対抗するため選手の体重増を図っている。屋部旺成主将は「今の技術はすごい。臼井さんの指導のおかげで筋力が増え、体重が重くなっている。県大会を勝ち抜き、全国でも当たり負けしない体をつくりたい」と力を込めた。
 (長嶺真輝)