サンゴの珍百景 「砂に潜って移動」 トゲウミサボテン属で美ら海など初解明


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 【本部】海底に固着して成長するのが一般的なサンゴのイメージだが、常識を覆す生態が明らかとなった。8本の触手を持つ「八放サンゴ」の仲間「トゲウミサボテン属」の一種が、モグラのように砂泥底を潜行移動する様子が確認された。沖縄美ら海水族館(本部町)と琉球大学のライマー研究室が解析を進め、移動のしくみを世界で初めて解明した。

潜行移動するのが確認された「トゲウミサボテン属」の一種(C)国営沖縄記念公園(海洋博公園)

 サンゴはイソギンチャクに似た「ポリプ」が集まった群体。植物と間違われやすいが、イソギンチャクやクラゲと同じ刺胞(しほう)動物の仲間。だが刺胞動物でも幼生サンゴやクラゲを除き、成体が地中を移動するような大きな移動は「これまで確認されなかった」とジェイムズ・デイビス・ライマー准教授は振り返る。

 「トゲウミサボテン属」は、砂泥底に直立する「ウミエラ目」に属している。観察された群体はサボテンのような形で、全長は12センチほど。体の下端部を砂泥底に突き刺してほとんど動かず、流れてくるプランクトンなどを捕食する。

 潜行移動が見られた群体は昨年4月、本部町沖の水深120メートル地点で採集。4、5月の2カ月間で、潜行移動が複数回観察された。研究対象は骨軸を持たず、ポリプは退縮可能などの特徴が、潜行移動に生かされていることが明らかになった。

 「八放サンゴ」の中には抗菌作用のある成分を抽出できる生物がいるなど、医療分野への活用が期待されているが、いまだ基礎的な知見が得られていない部分が多い。今後につながる発見に、ライマー准教授は「沖縄の海は宝。研究を続けて守っていきたい」と力を込めた。

トゲウミサボテン属の一種が潜行移動する様子(C)国営沖縄記念公園(海洋博公園)

 群体は水族館内「深海の小さな生き物」で展示しており、潜行移動する様子は水族館の公式ユーチューブで配信されている。ウミエラの研究に取り組んでいる、論文筆頭著者の櫛田優花さん(26)は「変だな、面白い生き物だなと感じながら見に来てほしい」と呼び掛けた。

(喜屋武研伍)