往来自粛全面解除 観光受け入れ本格化 航空、レンタカー予約増傾向■過当値下げ競争も


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到着ロビーで、新型コロナウイルス感染症に関するチラシを配布する関係者ら=19日午前、那覇空港(喜瀨守昭撮影)

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い実施されてきた県をまたいだ移動が19日から全面解除となり、沖縄への観光客の受け入れが本格化していく。観光産業の厳しい経営状況は続いているが、航空路線やレンタカーなどの予約数は増加傾向にあるなど、回復に向けた期待の声が高まっている。

 格安航空会社(LCC)のピーチアビエーションは19日から国内全路線の運航を再開し、運休していた関西―石垣、成田―石垣路線も復活した。

 那覇空港ビルディングによると、那覇空港の国内路線の運航便数は18日に68便だったのが19日は93便まで増えた。到着ロビーでは、ミス沖縄らが観光客を出迎え、発熱時の連絡先や「安全・安心な沖縄へようこそ」のメッセージが書かれたチラシを配布した。

 需要回復に期待

 観光客の激減で稼働が停止していた各施設も、客足の回復を見込んで営業を再開していく。

 北谷町美浜のランドマークとなる観覧車「SKYMAX60」は4月から休業していたが、20日の営業再開を発表した。再開に伴い県民の乗車料金を半額にするなど利用促進のキャンペーンを実施する。

 4月から休業を続けているおきなわワールド文化王国・玉泉洞(南城市)は、7月3日からの営業再開を決めた。7月は航空路線の復活の動きがあることや、国内旅行需要を喚起するため国が実施する「GoToキャンペーン」への期待も大きい。

 施設を運営する南都の大城宗直社長は「全国の観光地との競争は間違いなく起きる。キャンペーンを使ってしっかり誘客する必要がある」と意気込んだ。

 一方、那覇市の国際通りは「当面の間休業します」の張り紙を貼ったシャッターがまだ目立つ。19日に約2カ月ぶりに営業を再開した土産品店では、賞味期限が7月に迫る商品の在庫を半額でセールしていた。

 店は開けたものの、様子を見て再休業することも検討する。店主(60)は「通りに人はいない。少しずつ戻ってるかもしれないが、去年と比べたら桁違いだ。まだまだ時間がかかる」と店の外を見つめた。

 国内客奪い合い

 22日に営業を再開するOTSレンタカー臨空豊崎営業所(豊見城市)では19日、従業員らがハンドルやナビの消毒をするなど感染対策を図りながら準備を着々と進めていた。

 ただ、国内客の予約は入りつつあるが、これまではインバウンド(訪日外国人客)の利用客が多かったため、感染拡大前の売り上げ水準に戻るのは時間を要すると見通している。

 さらに、少ないレンタカー利用客を事業者間で取り合うため、過当な値下げ競争が始まっているという。インターネットのレンタカー予約サイトによると19日時点で、コンパクトカー1泊の最安値が免責補償料や税込みで1690円という店舗もある。

 安部潤マーケティング戦略本部長は「単価が下がることで、予約件数が減るよりも売り上げが落ち込んでしまう。どれだけ回復するのか読みにくい部分がある」と先行きを懸念した。
 (中村優希、池田哲平)