部員1人から強豪校に 「後輩にいい流れを」3年生奮起 北山高校陸上部 未来つむぐ夏(2)


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部員1人から強豪校に 「後輩にいい流れを」3年生奮起 北山高校陸上部 未来つむぐ夏(2)
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 近年、高校生の陸上競技で北山高陸上部が存在感を増している。駅伝部は都大路への出場を重ねる名門として知られるが、陸上部は対照的に5年前まで部員1人という状況だった。やんばるから県内トップ、全国出場を目標に北部地域の選手が集いだし、年を追うごとに有力校へと変貌。今では短距離や跳躍、投てきでトップ選手を輩出する。各選手とも全国総体の中止には肩を落としたが、県総体で結果を残し、後輩に強豪の流れを引き継ごうと3年生たちが奮闘している。

 変化のきっかけは2016年に同校陸上部OBの仲宗根尚二監督(45)が赴任したこと。それ以前は部員1人のみだったが、着任した春に1年生がもう1人入部した。

 「母校を再び盛り上げたい」。熱い思いを胸に選手と一緒に北部地域の中学生を指導する活動を始め、翌年は4人が入部。徐々に大会で結果も残せるようになり、名護市や本部町、伊江村など北部各地から選手が集まるようになった。今はマネジャー1人を含め27人の大所帯だ。

 仲宗根監督は「今では中学のチャンピオンも入部してきてくれる」と感慨深げに語る。

 今年は各学年の層が厚く、九州、全国を狙える選手も多かった。それだけに全国総体の中止で選手たちは「モチベーションが下がった」と口をそろえる。それでも最後の夏を迎える3年生たち。それぞれに目標を設定し、やる気の火をたき付けている。

 昨秋の県新人対校選手権やり投げ女王の照屋琴実(18)は伊江村出身。「大会に合わせて島から応援に来てくれる人も多く、全国出場が恩返しになると思っていた」と悔しさは残るが、今は記録更新という目標をモチベーションに変える。自己ベストは38メートル35。「40メートルを超え、北山で陸上をやって良かったと思える大会にしたい。1、2年生にも活躍する姿を見せたい」と女子主将として後輩に思いを紡ぐ。

 走り高跳びで県総体2連覇を狙う上間海叶(かいと)(17)は、大学の受験勉強や並行して取り組む演劇活動に注力するため、県総体を最後に引退することにしている。自己ベストは1メートル90だが「県総体では2メートルを突破したい」と集大成での大ジャンプを見据える。

 陸上の全国大会はまだU18日本陸上競技選手権(広島県、10月23~25日)が残されており、参加標準記録を突破すれば出場できる。

 100メートル、200メートルで出走を目指す仲宗根尚(17)は「県総体では優勝と記録更新を狙う」と意気込む。大学進学後も競技を続ける考えで「100メートルの公式戦ベストは10秒9だが、スタートダッシュを磨いて今季で10秒6を出したい」とレベルアップを誓う。 (長嶺真輝)

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県高校総体が7月18日に開幕する。新たなステージに向け上位を狙う選手がいれば、競技生活を締めくくる集大成として活躍を期する選手がいる。思いはさまざまだが、それぞれが新たな未来をつむぎ出す特別な夏の舞台がもうすぐ幕を開ける。全国インターハイは中止となったが、前を向き奮闘する選手の姿を追う。 (随時掲載)