字名に「尖閣」石垣市議会が可決 賛成多数で「登野城尖閣」に 


字名に「尖閣」石垣市議会が可決 賛成多数で「登野城尖閣」に 
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 【石垣】石垣市議会(平良秀之議長)は22日の市議会6月定例会最終本会議で、市の行政区域にある尖閣諸島の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更する議案を、賛成13、反対8の賛成多数で可決した。10月1日から字名が変更される。尖閣諸島の領有を主張する台湾、中国との緊張が高まる可能性がある。

 市議会の採決では与党12人と保守系野党1人が賛成し、野党8人が反対した。討論では野党側が台湾との関係悪化への懸念を示したことに対し、与党側からは市の行政区域での字名変更のため他国・地域に配慮する必要はないとの認識を示した。

 中山義隆市長は可決後、報道陣に「政治的意図はなく、行政手続きの範ちゅうだ」と従来の見解を改めて強調した。台湾との関係悪化への懸念については「台湾とは長い交流があり、これまでの信頼関係がある。行政手続きの一環であることを伝えたい」と述べた。

 市議会の可決を受けて、台湾北東部の宜蘭県政府は同県議会が可決した「釣魚台」(尖閣諸島の台湾名)から「頭城釣魚台」へ名称変更する議案を22日付で内政部(総務省相当)に提出した。

必要性の根拠薄弱

 「行政手続きの効率化」を掲げ、尖閣諸島の字名に「尖閣」を明記するための議案が石垣市議会で可決されたが、これまでの議論で字名変更による行政手続き上の必要性が示されたとは言いがたい。一方で、台湾や中国との関係悪化につながるとの懸念はくすぶる。

 市は現行の字名では行政手続き上、支障があるとの認識を示した。ただ具体的事例として、約30年前に魚釣島への住民登録を誤って受け付けた事例1件しか挙げていない。提案理由としての根拠は薄弱で、中山義隆市長が否定する「政治的意図」による提案だとの印象は拭えない。

 尖閣諸島周辺の領海では5月上旬、日本漁船が中国海警局の船に追尾された。今回の変更は中国などへのけん制ではないかとの見方もある。

 中山市長は自身が台湾当局に中国をけん制する意図があると説明したとする台湾メディアの報道を否定しておらず、中国公船による尖閣周辺海域での連日の活動や漁船追尾が確認された時期であることを踏まえると、尖閣での行動を活発化させる中国への“対抗措置”のように映る。

 政府与党・自民党の一部からは市の字名変更を政府としても支えるよう求める声も上がる。一方で、日本政府は一自治体の決定にすぎないとし、静観することで過度に問題化しないように振る舞ってきた。中国・台湾政府も、議案可決前までは字名変更に強硬な反発姿勢は見せていない。

 だが台湾では野党・国民党が強い抗議の意思を示しており、今後、強硬的な手段が取られた場合は日台間の緊張の火種にもなりかねない。新型コロナウイルスで落ち込んだ石垣島観光の盛り返しにも影響を与える可能性もあり、中国、台湾の強い反発も懸念される。 (大嶺雅俊)