子育て同様「木は思う通りにいかない。だから楽しい」 県内でも少ない女性木工職人が活躍


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コーヒーメジャーを作るためタブノキを小刀で削る森田敦子さん=12日、八重瀬町仲座の「木とうるし工房ぬりトン」

 【八重瀬】「職人の仕事はリズムがある」。漆をぬりぬり、木をトントン。八重瀬町仲座の「木とうるし工房ぬりトン」では県内でも数少ない女性木工職人の森田敦子さん(46)が汗を流す。想思樹、イタジイ、フクギなどの県産木材を使用し、箸やスプーン、皿などを手作りしている。作品は一つ一つ木目が違い、どれも一点ものだ。新型コロナウイルス感染症で販路が限られたことを機に6月からはネット販売も開始した。森田さんは「いま作っている皿などに限らずオーダーメードも受け付けている。ぜひネットでも見てほしい」と呼び掛けた。

 8坪(26平方メートル)ほどのプレハブの工房。床上には木材を加工する大きな機械を置き、壁面には長年使用し愛着のあるノミやカンナなどが所狭しと並ぶ。

 静岡県出身の森田さんは子どもの頃から絵を描くのが好きだった。美大を目指す中、予備校で見掛けた美大の木工コースを紹介するパンフレットに衝撃を受けた。「平面ではなく立体が面白そう」。木工の道に進むことを決意した。卒業後、神奈川県の木工玩具店でデザインに携わった。だが「自分で作りたい」と退職。愛知県の工房に弟子入りした。厳しさと優しさを兼ね備えた師匠の下で5年半、木工作りだけでなく、客との接し方売り方を「見て盗んだ」という。

県産木材を使用し手作りした木工品を手にする森田敦子さん。前方にはこれまで手掛けたスプーンや箸などの木工品が並び、後ろにはノコギリなどの道具が綺麗に並ぶ

 2005年、漆にも興味を持ち、湿度や気温が漆作りに適している沖縄に移住した。06年には「木とうるし工房ぬりトン」を構え、同時に、首里城正殿の復元事業にも参加し漆塗りを手掛けた。

 現在、漆職人の夫哲也さん(43)とともに小3の長女と保育園に通う長男の子育てをしながら木工と向き合う。子育て同様「木は曲がったりしなったりこっちの思う通りにいかない。だから楽しい」

 コロナで販売先の土産店などの休業が相次ぐが「大変なこともあるけれど、ずっと木工を続けられたらいいな」と語った。

 問い合わせはメールnuriton2006@gmail.com。インターネットで「ツクツク ぬりトン」と検索。