「イーアス」オープンで競争が激化する沖縄の大型施設 パルコ、ライカム…コロナ時代で勝ち抜くカギは?


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126店舗が出店するイーアス沖縄豊崎の施設内=18日、豊見城市豊崎

 豊見城市豊崎に19日、大型商業施設「イーアス沖縄豊崎」が開業した。店舗面積は4万7600平方メートル、沖縄初出店27店舗を含む126店舗の出店数は県内3番目の規模のショッピングセンターだ。新型コロナウイルスの影響で2カ月開業が遅れたものの、県外との往来制限が全面解除となったこともあり、開業後初の週末は多くの来店でにぎわった。

 コロナ禍での開業

 イーアス沖縄豊崎の大城秀隆支配人は「ロケットスタートではないが、堅実に売り上げは取れている。想定より客単価が高くなっている」と話す。特に飲食店や家電量販店、雑貨の売り上げが好調だった。国の特別定額給付金や、長く自粛が続いたことの反動で購買意欲が増したことなどが消費を後押ししたと見る。

 県内の小売業界はイーアスの開業以前から競争が激化している。2015年にイオンモール沖縄ライカム(北中城村)、18年に那覇オーパ、19年にサンエー浦添西海岸パルコシティと大型商業施設の開業が相次いでいる。小売関係者は「飽和状態にあることは間違いない」と指摘する。

 商業環境の厳しさにさらに追い打ちをかけているのが、新型コロナウイルスによる消費の落ち込みだ。沖縄総合事務局によると4月の県内百貨店・スーパーの販売動向は前年比マイナス19・2%。中でも外食と衣料のマイナス幅は大きい。

 東京商工リサーチ沖縄支店は「観光客は少しずつ戻って来るだろうが、利益を生むところまでいつ到達するか」と不安視する。

 立地と差別化

 イーアス沖縄豊崎の開業は当初4月23日を予定し、初年度の売り上げは220億円、来館者は1千万人を目標としていた。しかし新型コロナウイルスの影響で開業が遅れたことや、出店を取りやめたテナントがあったことから、売り上げは140億円、来館者は700万人と下方修正した。来店客は県内客7割、観光客3割の比率を想定する。

 大城支配人は「7月以降に観光客がどれだけ来るか。県民にリピートしてもらえるよう飽きさせない工夫もしていく」と話す。

 ビーチに隣接していることや、那覇空港からのアクセスの良さ、22年には隣接地にホテルが開業を予定していることから、関係者は一様に「おもしろい場所」と口をそろえる。

 県内の大型商業施設は休日になると家族連れが目立つ。沖縄国際大の宮森正樹教授はこれを「ショッピングセンターのテーマパーク化」と表現し、県内全域を商圏とした「テーマパーク」はイーアス沖縄豊崎のほか、イオンモール沖縄ライカム、サンエー浦添西海岸パルコシティ、サンエー那覇メインプレイスの四つとする。

 イーアス沖縄豊崎は「体験型消費」を打ち出すが、宮森教授は「体験型は大きな流れで、それだけでは差別化にならない。ターゲットを絞って体験を提供することやエリアごとの魅力が鍵を握る」と指摘した。
 (玉城江梨子)