こよなく海愛す17歳 先生やOBへ「最低でも優勝」 ヨット男子・上原瞬(知念3年) 未来つむぐ夏(4)


社会
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全身で風をつかみ加速する上原瞬(右)=20日午前、与那原町東浜の与那原マリーナ(新里圭蔵撮影)

 海をこよなく愛し、一生を海原に関わって生きていく覚悟を決めている。知念ヨット部3年の上原瞬(17)の将来の夢は海上保安官だ。次のステップへ力強く踏み出すためにも、高校最後の舞台となる県総体で納得のいく帆走を誓う。「最低でも優勝。お世話になった先生やOBに最高の走りを見せたい」。艇を操る手に、力が宿る。

 南城市出身。釣り好きの父・安夫さんの影響で幼い頃から海が一番の遊び場だった。家族で離島に出掛けると、当然のように潜ってもりで魚を突いた。

 友人の誘いで小学3年の時に野球を始め、中学まで続けたが、ヨットを始めるために知念高に進学した。「海が好きだから、海のスポーツをやってみたかった」

 スタートと同時に風に向かってジグザグに進んでいくヨット。風をつかみながらかじと帆を両手で操り、乗る位置も変えながら船の体勢を保つ。風向きや潮といった自然の変化に大きく左右されることから、初めは前進することすらままならなかった。「このままやっていけるのか」。不安があった。

大会に向け意気込みを語る上原瞬=20日午前、与那原町東浜の与那原マリーナ

 それでも好きに勝るものはない。週6日の練習で乗り込むうちに「波の立ち方でその場の風向きや強さを読み、走るコースを考えられるようになった」。昨年の県総体では縦420センチの船艇を2人で操る「420級」で初優勝。代表に選ばれた昨秋の茨城国体では全国レベルの駆け引きも学び、今夏の全国総体や国体で上位に上り詰める決意だった。

 しかし新型コロナウイルスの影響で全国総体は中止に。「目標がなくなった」と気落ちし、春先に部活動から足が遠のいた。休校期間も重なって約3カ月、ヨットから離れたが「先生やOBに支えられてやってこられた。このまま終わるなんて、そんな裏切り方はない」と6月の部活動再開後に再び船上へ。久しぶりの海。潮風の香りや開放感が心地いい。1年の頃から「生活の一部」として練習に励んできたおかげで、久しぶりの操船も「体が覚えていた」と腕の衰えは感じなかった。「やっぱり海が好きだった」

 6月からは海上保安学校(京都府)の採用試験に向け、那覇市の塾に通い始めた。420級に出場する県総体を最後に、受験勉強メーンの生活へとかじを切る。優勝を最低限の目標に、先生やOBに「恩返しになる走りがしたい」と気合を入れる。集大成に向け、風を読み、波を見切る感覚を研ぎ澄ませる。

(長嶺真輝)