さらなる躍進きっかけに 最後の大舞台へ力蓄え レスリング 古謝泰斗(具志川)仲泊将太郎(北農)未来つむぐ夏(7)


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 県内高校のレスリング競技は中断期間を経て、6月中旬からようやくスパーリングが可能になった。この夏で競技を引退する選手、進学後も競技を継続することを決め、さらなる躍進のきっかけにしたいと考えている選手―。さまざまな思いで最後の県総体に向け、力を蓄える。

■拳法と“二刀流”

 具志川レスリング部でただ一人の部員の古謝泰斗(17)にとっては最初で最後の県総体となる。

 小学校から嘉手納レスリングクラブに所属していたが「やらされている感があった」と高校に入ると一度競技を離れ、卓球部に入った。ただ、1年の後半に総合格闘技の番組や格闘漫画「修羅の門」に刺激され「レスリングってかっこいい。新鮮に感じた。やるからには、大会で成績を残したい」と再びのめり込んでいった。

 大会出場のためには、部活として認めてもらう必要があった。当時、具志川にレスリング部はなく、2年の4月に同好会を立ち上げたが、承認が間に合わず県総体は出場できなかった。今年は念願かなっての出場で、勝敗よりもまず出られる楽しみが勝っているようだ。

 昨年11月の県高校新人は51キロ級に初出場し、初優勝と輝かしい成績を残した。ただ、減量に苦しみ、試合内容は到底納得いくものではなかったという。「構えがきれいに取れず、自分の動きがなかなか出しきれなかった」との反省から、県総体ではベストなコンディションを大会本番に合わせるため、減量ペースなどを課題としている。

 中国拳法の道場主でもある父・雅人さん(55)の影響もあり、拳法も極める。昨年の国体から公開競技となった「武術太極拳」で、県代表として出場するほどの実力だ。昨年はレスリングでの代表枠にはあと一歩届かず「二刀流での国体」は2020年に持ち越されたはずだった。

 だが、鹿児島国体は延期が決まり、全国高校総体の中止にも心を痛める。一方で、将来に向けては「通過点」でしかないと考えている。ゆくゆくは、プロの総合格闘家や指導者への道を見据えている。

 「夢をかなえるためには、レスリングも武術も無駄なものは何もない。今後も両方続けていく」。気鋭の17歳。最初で最後の夏に向け汗を流す。

■強豪引っ張る主将

 レスリングの強豪・北部農林でただ一人の3年生、仲泊将太郎主将(17)は、幼稚園から続けてきたレスリングを高校で引退することを決めている。3年連続出場の全国高校総体、いまだ出場したことのない国体出場への目標が絶たれ「もう県総体しかない」と強い気持ちを持っている。

 65キロ級で活躍した兄勇之介(北部農林出―東洋大1年)への勝利を誓った昨年は、結局勝つことができずに終わった。

 今年は兄から主将を引き継ぎ、チームを率いる。兄を超えることはできなかったが、団体戦で24度目、5連覇の偉業が懸かる大会だ。精鋭たちが出そろった約2カ月ぶりのスパーリングにも熱が入る。大会に向けてはタックルに入りやすくなるよう「崩しをもっとレベルアップさせないと」と課題を挙げ、黙々と練習に取り組む。

 「後輩のためにも、主将として引っ張っていかないと」と自らに言い聞かせつつ、マット上で何度も立ち上がり、果敢に相手に向かう姿を思い描き、本番を待ち望んでいる。
 (上江洲真梨子)

北部農林でただ一人の3年生の仲泊将太郎=6月21日、名護市の同校
最初で最後の県高校総体に備え、スパーリングで汗を流す具志川の古謝泰斗=6月24日、うるま市の総合格闘技・フィットネス studio Will