病院整備「早期となぜ言えぬ」北部首長ら知事に不満 優先順位に食い違いも


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北部地域基幹病院の早期整備を求めた要請書を玉城デニー知事(右)に手渡す北部地域基幹病院整備推進会議の當眞淳会長=2日、県庁

 沖縄県名護市の県立北部病院と北部地区医師会病院を統合して北部基幹病院を設置する計画で、北部地域基幹病院整備推進会議の要請に対し、玉城デニー知事は早期の合意書締結に前向きな姿勢を示した。

 しかし締結時期が明示されず、要請に訪れた関係者は「具体的な時期をなぜ明言できないのか」と不満を募らせる。

 北部地域は早期の基幹病院整備を再三、県や国へ要請したが、事業は進んでいない。北部12市町村長が県の合意書案を受け入れたのが今年2月で、4カ月が経過しても具体的な動きは見られなかった。北部地域はしびれを切らし、今回の要請に至った。

 玉城知事と北部地域の足並みの乱れも懸念される。玉城知事は要請の場で「医師の安定確保のための住居整備と、先生方が(子どもたちを)より高い教育レベルに進学させたいという、中高一貫校の取り組みも合わせて進めたい」と明言した。

 同会議所の石川博己副会長は「(北部地域が)求めるのはしっかりとした基幹病院の建設だ」と述べ、優先順位をはき違えないようくぎを刺した。

 県の宮城優医療政策課長は「北部の最大の課題は医師の安定的な確保だ」と指摘する。医師を呼びやすい環境整備を同時に進めたいとの考えもあるが、一刻も早い合意を求める北部地域との食い違いも出ている。

 県議会の議論では、新たに設置する基幹病院を指定管理者制度にすることで、不採算医療の提供停止など経営環境の変化を懸念する意見も上がる。

 玉城知事は「不採算医療の提供を公的に行うシステムの構築が大事だ」と強調する。しかし県立北部病院ではすでに診療制限が行われており、現時点でも万全な医療の提供が容易ではない環境下にある。

 このような実情を踏まえ、玉城知事には北部地域の懸念や不満を拭い去るための、さらなる説明責任が求められる。