新型コロナウイルスの感染拡大で、今秋のプロ野球ドラフト会議での指名を待つ選手らが影響を感じ始めている。複数のスカウトが攻守で評価する九州共立大の平良竜哉主将(前原ルーキーズ―伊波中―前原高出)もその一人だ。大学一を決める全日本大学選手権、チームが加盟する福岡六大学の春季リーグが中止となり、スカウトへアピールする場を失った。チーム練習は3月上旬から自粛しており、再開は不透明だ。相次ぐ大会中止に悔しさをにじませる一方、再びグラウンドに立てる日を待ち、バットを振り続ける。
■努力家
前原高で指導した大川基樹監督(現小禄高監督)は「人を引きつける太陽みたいな子」と人柄を説明する。苦しくて弱音を吐いてしまうような練習でも「周囲をもり立て、引っ張ってくれる。僕も部員も彼に引っ張ってもらっていた」と振り返る。1年時からスイングスピードは並外れていた。120メートル以上投げる強肩でもある。170センチと大柄ではないが「素質と努力家の部分がここぞの爆発力につながっている」。本塁打が多い方ではなかったが、3年時、大学のスカウト陣が駆け付けた練習試合で2本を放った。大川監督は「自分が試合を決める、というイメージを常に持って練習、試合に臨んでいる」と評価した。
大学1年の春季リーグ開幕戦から1番、一塁手で出場。「どんどんバットを振る」とチーム練習後も自主練習に取り組み、人一倍努力した。しかし、その年の秋季は負傷し、結果を出せずに苦しんだ。
ただ、それだけではくじけない。「打撃、練習への取り組み方、時間の使い方を考える機会になった」
金属バットを使用する高校と違って大学では木製を使う。スイング力には自信があったが「全く打てないと痛感した」。フォームやスイングなど先輩らに教えを請い、細かく試してきた。すると徐々に変化が出てきた。高校であまり打てなかった本塁打も「木製の方が打てるようになった」と技術面で大きな飛躍を遂げた。
■成長を実感
2年春から4番に座り、主軸として活躍。今は主将として、チームをまとめる大役も担う。
福岡六大学でMVPや首位打者、盗塁王に打点王、本塁打王に敢闘賞、3季連続ベストナイン―など、タイトルを総なめにしてきた。「タイトルを取って結果を残しても不安になる」とその気持ちを練習量で補ってきた。「これだけ練習したなら、絶対打てる」と打席に立つようにしているという。ただ、オーバーワークで負傷してしまうこともあった。
3年は侍ジャパン大学代表の選考に通ったが、腰の不調で代表を辞退せざるを得なかった。活動が休止している期間は、これまでの練習方法を見直した。素振りの動画を先輩に見てもらい助言をもらいながらフォームを改善したり、瞬発力や筋力低下を防ぐためのトレーニングをしたりして、「休止中もいろいろ試せるので、よかったと捉えている」と前を向く。
新型コロナで大会や練習試合が組まれず、プロへのアピールの場を失っている。「悔しい気持ちはある。ただ、みんな同じ状況なのでしっかり割り切って、チャンスを待ちたい」。熱い闘志を胸に、きょうも汗を流している。
(上江洲真梨子)