1校のみとなる県総体 真剣勝負で最高の舞台を フェンシング男子 金城由八、海勢頭慶悟、下地凜(具志川) 未来つむぐ夏(10)


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県高校総体へ意気込む(左から)下地凜、主将の金城由八、海勢頭慶悟=28日、うるま市の具志川高校

 部存続の危機、全国で戦う夢の消失、県内ライバル校の不参加―。苦境を数え上げれば切りがない。具志川高の男子フェンシング部は気持ちを切り替え、悔いのない最後の夏にしようと前を向く。参加が1校のみとなる県総体は、3年の主将金城由八、海勢頭慶悟、下地凜による個人戦の同校対決となる。どの競技にも負けない熱戦とすることを誓う。

 3人が競技を始めたのは高校に入ってから。他校にはないフェンシング部に興味を引かれた。武具を自在に操る姿に魅力も感じた。初心者が多いことも競技に飛び込む背中を押した。互いに一から力を高め合える環境ものめり込む要因となった。

 創部は2013年。竹島恵美子教諭(現読谷高、県高体連フェンシング専門委員長)が赴任して新設された。翌年には県総体の学校対抗で初優勝し、金城らが1年の時に5連覇を達成した。しかし昨年は優勝争いを繰り広げてきた沖縄工に圧倒され、連続優勝が途絶えた。引っ張ってくれた先輩が引退し、3人で臨んだ今年1月の全九州高校選抜は、学校対抗フルーレの初戦で鹿児島南に5―45と惨敗。改めて競技レベルの差を思い知った。

 光明もあった。得点に結びつける技術や駆け引きが複雑で競技経験がものをいうフルーレと違い、同時突きの一瞬の判断で勝負が決まるエペでは勝負できた。1回戦で諫早商(長崎)に42―45と敗れはしたものの、一時はリードするなど肉薄した。

 会場では心ない言葉が耳に入ってきた。「どうせ(沖縄が)負けるから」「長崎を見ておけ」。試合が始まると、諫早商を苦しめる展開に会場の雰囲気が一変する。

県高校総体に向け練習に打ち込む具志川高校の男子フェンシング部=28日、うるま市の具志川高校

 竹島教諭は「他校の選手の目の色が変わった」と振り返る。中でも金城は中学で経験した剣道を素地にした積極的な攻撃スタイルで九州でも通用するとの実感を得たという。

 3人は九州や全国のレベルに「小中から経験していて技術だけでなく体格やリーチも上」と差が歴然としていると繕わずに言うが、竹島教諭は「チャンスはある。だからこそ九州で戦う姿を見たかった」と九州総体の中止を残念がった。

 昨年、団体優勝の沖縄工は出場選手がそろわず、県総体不参加が決定。雪辱の機会はなくなり、3人は「勝って終わりたかった」と声をそろえる。

 その上で金城は「このまま引退では悲しかった。総体開催で一つ目標ができたのは良かった。結果を残したい」と奮起している。

 沖縄工同様に今年は1年の入部がなく、県内高校の現役選手は具志川の3人だけだ。ただ、競技人口の多寡は、ひたすらに技を極める選手の熱量には影響しない。3人で切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間への思いは永遠に心に刻まれる。その記憶をより良いものにしようと、今は目の前の大会に集中し、真剣勝負で最高の舞台をつくり上げる。
 (謝花史哲)