【記者解説】普天間爆音訴訟上告棄却 安全保障の前に立ちすくむ生存権


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 「静かな夜を返せ」という市民の訴えは、またも司法の壁にはね返された。米軍普天間飛行場での米軍機の飛行差し止めなどを求めた第2次普天間爆音訴訟。最高裁は原告8人の上告を棄却した。

 同訴訟では、2010年7月(第1次訴訟)、昨年4月16日(第2次訴訟)と2度にわたって福岡高裁那覇支部が、騒音被害による国の賠償責任を認めている。昨年の判決では「受忍すべき限度を超える違法な権利侵害」と判示した。

 司法は住民の生活と健康が脅かされる爆音の違法性を認めている。しかし、肝心の「飛行差し止め」については、米軍飛行場の運用は日本政府の支配が及ばないとする「第三者行為論」で司法判断を避け続ける。国が米軍に普天間基地を提供し、爆音を放置する行為の違憲性についても踏み込むことはなかった。

 司法が憲法25条で保障された市民の「生存権」よりも「安全保障」を優先させていると言わざるを得ない。原告団は第3次訴訟を提起する方針だ。「安全保障」の名の下に判断を回避し続ける司法に対して「主権国家とは何か」という根源的な問いを投げ掛ける。
 (安里洋輔)