【深掘り】専門家から「基地のロックダウン」の指摘も 米軍コロナ情報非公表 国は追認、県も配慮 


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米軍キャンプ・ハンセンのゲートに新型コロナウイルスの検査を行っている事を示す横断幕を設置する米兵ら=9日午後0時20分ごろ、金武町

 米軍関係者の感染が相次ぐ中、世界で最も感染者が多い米本国を含む地域から大勢の米軍関係者が夏の異動時期に合わせて来沖している。米軍は感染者数や感染経路、行動履歴を明らかにしない。県民の命や健康に直結する重大な局面だが、日本政府は米軍の方針を追認するのみだ。県も感染者数の公表については米軍の意向を踏まえた対応にとどまる。

 北谷町のホテルを米軍が借り上げて異動対象者を隔離していることについて、地元の町は反発する中、日本政府は問題視しない立場だ。米軍も日本政府と調整済みであることを盾に町の抗議を受けない姿勢を示すなど基地外での隔離措置を正当化している。日本政府は情報開示についても海軍病院から県に適切な情報提供がなされているとの認識を示す。だが実際は県も感染者の行動歴について一部しか情報を得られていない。

 一方、県は米軍関係者の感染者数について知らされているが、非公表を貫いている。部隊の運用能力に関わるという米軍の意向を尊重するためだ。玉城知事は米軍自身で公表するよう求めるが、県からの公表は「米軍の方針に合わせたい」とし控える考えを示した。県幹部は「本当は公表すべきだと思う」としつつ「もし米軍が一切の情報を出さなくなれば、米軍内の感染に手も足も出なくなる」と語った。

 群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師は「おおよその規模と感染経路を明らかにしてほしい。県民への感染伝播が起きた可能性もある」と語った。県に対しては「米軍と交渉し、県民のために疫学的に重要な情報は公開してもらうべきだ」と語った。

 県は米軍に対し自粛レベルを上げることも要請しているが、県に助言する専門家らからは基地をロックダウン(封鎖)に踏み込むべきだとの指摘も上がる。

(明真南斗)