総菜など「中食」需要取り込む 増税やコロナが既存店に影響<コンビニサバイバル・上>


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 コンビニ国内最大手のセブン―イレブンが沖縄に出店して、11日で1年が経過した。47都道府県で唯一の「空白地」だった沖縄についにセブンが上陸し、ファミリーマート、ローソンの3社競合が激しさを増している。沖縄のコンビニ市場は全国でも高い伸び率で拡大してきたが、競争の激化に加え、少子化や人手不足などの環境変化から、新たな成長モデルを模索する過渡期にさしかかっている。県内コンビニ業界の最前線を追う。

 「百点満点だ」。沖縄進出1年目に付ける点数を問われたセブン―イレブン沖縄の久鍋研二社長は、自信を持って言い切った。

 県内店舗の平均日販(1店舗当たりの1日の売上高)は公表していないが、売り上げは「予定以上」(久鍋社長)。出店も計画通りに進み、8月末には57店舗になる予定だ。

 1年で県内50店舗を開店させたとはいえ、ファミリーマート(327店舗)、ローソン(242店舗)とは開きがある。多くの県民にとっては「近所にセブンがある」という状況にはまだない。それでも、セブンの看板は消費者を引きつける。県内店舗の客単価は全国より高いという。店内ではスーパーのように買い物かごを持ち、冷凍食品や人気のカップ麺などを買い込む客の姿が見られる。

好調な冷凍食品。冷凍ケース3台設置は沖縄で成功したため全国に広がっている=セブン―イレブン那覇松山1丁目店

■大胆なレイアウト

 セブンはプライベートブランド(PB)商品の豊富さと質の高さを強みとし、特に冷凍食品は沖縄進出当初から好調に推移しているという。新型コロナウイルスの影響による学校の臨時休校、外食機会の減少で、持ち帰り総菜などの「中食」市場が拡大している。その需要もうまく取り込んだ格好だ。

 冷凍商品のケースを3台配置した大胆なレイアウトは沖縄での成功を受け、全国でも展開中だ。

 一方で、期待値の高さゆえの弱点もある。40代の女性は「新商品の情報をネットで見ても、『沖縄は除く』が多い」と品ぞろえに不満を漏らす。

 りゅうぎん総合研究所の城間美波研究員は「最初の1年は真新しさで客を引きつけられたが、今後はその武器は無くなる。期待値が高いだけに、全国展開しているのに沖縄だけ中身が違うというのはがっかり感につながる」と指摘する。

 セブン&アイホールディングス広報は「他県と陸続きの本土は複数工場で供給しているが、沖縄は専用工場が1カ所。どうしても製造する品目に影響が出てしまう。店舗数が増えることで、製造ラインを増やすことができる」と説明する。

■前月比マイナスも

 日本銀行那覇支店の調べで、県内コンビニ全店の販売額は、今年3月まで前年同月比でプラスが続いている。

 だが、セブン出店以降の推移を見ると、県内全体で店舗数が毎月増えているにもかかわらず、販売額は前月を下回る月もある。経済産業省の商業動態統計によると、セブンが出店した19年7月の県内コンビニの店舗数は576店で、その販売額は125億4600万円だった。

 今年4月の店舗数は611店となり9カ月で35店舗の増加となった。一方で、販売額は店舗数の伸びに比例せず、新型コロナウイルスの影響を受ける3月まで111億円前後の推移にとどまる。城間研究員は「店舗増加数の割には販売額の増加幅が小さい。既存店は厳しくなっているのではないか」と分析する。

 好調な県経済の中でコンビニの出店競争が続いてきたが、市場の飽和感を指摘する声もあった。その中で昨年10月の消費税率引き上げが個人消費に影を落とし、さらに足元の新型コロナウイルスの影響が県経済を直撃している。

(玉城江梨子)