座間味島では老朽化に伴う新たな浄水場の建設場所を巡り、四つある候補地の中から大きく2案に絞られつつあるが、建設場所が決定していない。当初2019年度着工、20年度供用開始の予定だったが大幅にずれ込んでいる。浄水場を設置するのは県企業局で、県は「住民の合意を尊重したい」という姿勢で、村民の判断に注目している。
県企業局は6月17、18の両日、浄水場の新たな建設場所について、4回目の住民説明会を座間味島の村歴史文化・健康づくりセンターや各公民館で開いた。
浄水場の建設候補地について、県企業局は当初、座間味島南西部の阿真ビーチ近くにある阿真キャンプ場の隣接地((1)案)を予定していたが、津波の心配やウミガメの産卵地であるビーチの自然環境や景観が損なわれるとして、住民から高台での建設を求める声が上がったため、昨年、高台候補地の調査を実施した。
■費用、工期に違い
説明会では高台候補地3カ所の調査結果を報告した。3カ所とは、座間味集落北側の高月山にある既存の浄水場の用地に新設する案((2)案)、座間味集落西側の高台に位置する阿真チジ案((3)案)、座間味集落東側に位置する旧ごみ捨て場案((4)案)。(2)案は浄水場に隣接するヘリポートを移設して活用する案(高月山―B案)と、民有地の取得を必要としない案(高月山―C案)も説明した。
県企業局は造成面積や埋設ごみの処理などで(3)案と(4)案、(2)の高月山―B案を不適とし、(1)案と(2)の高月山―C案の2カ所が最適と判断した。
説明会で県は、既存の浄水場に新設する高月山―C案は低地の(1)案に比べて建設費や動力費用がかかり「工期が長くなる」と説明した。
宮里哲村長は「高台だと既存の浄水場に新設する高月山―C案が良い」と話す一方、村が既存の浄水場用地に防災拠点施設の建設を検討していることを踏まえて「現時点では一日も早く安心安全な水を供給するために(工期が短い)当初の案((1)案)がいいと思う」と説明会で住民に伝えた。
説明会に参加した住民からは「建設費や動力費が高くても津波の心配がない高台へ建設する方が当然良いのではないか」「阿真キャンプ場の案=(1)案=も津波を考えると不適にすべきだ」との声が聞かれた。
一方、一部の住民からは「高台に造るとすれば、大雨や地震でも崩れないという保証はできるのか」との意見も上がった。
■アンケート
説明会では村がアンケート用紙を住民に配布。村が取りまとめ、候補地を決定するとした。住民から「阿真キャンプ場を最適地とする村が、住民の声を反映した決断ができるのか」と疑問の声が上がった。
村の担当者は「村は2案のどちらかに偏っていることはない。ゼロに立ち返り、住民のアンケートを踏まえて決定する」と強調した。
後日、村の担当者によると、集まったアンケートは「2案とも僅差になっていた。最終的には村長の判断で決める」と答えた。
説明会では住民から「公正公平な住民投票を実施してほしい」との声もしばしば上がっている。
宮里村長は住民投票について明確な姿勢は示していない。また候補地の決定時期について明かさず「しっかりとこれまでの経緯を踏まえ、住民の皆さんと意見交換をしながら早期着工に向けて進んでいきたい」と話している。 (金城実倫)