三線教室、シールド越しの歌声 窓は全開、透明シート… 一時休止も工夫で再開


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フェースシールド越しに指導をする照喜名朝國師範=6月8日、那覇市の琉球古典安冨祖流絃聲会照喜名朝一研究所

 新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、県内の多くの琉球古典音楽研究所(三線教室)が一時休止に追い込まれた。現在は活動を再開し、三味の音と歌声が響く日々が戻りつつある。しかし、これまでとは少し違って聞こえるかもしれない。

 浦添市にある琉球古典音楽野村流音楽協会の銘苅盛隆研究所は、教室の休止前は空調の効いた部屋で長机を挟み、弟子を指導していた。再開した6月以降は常に窓を全開にし、長机の真ん中には透明シートを設置した。

 師弟は少し暑そうにしながらも涼やかな声を響かせていた。銘苅師範(70)は「コロナ前に戻ることは難しい。感染者が出ないよう心掛けて、研さんに努めたい」と話した。

 那覇市の琉球古典安冨祖流音楽研究朝一会は、6月からフェイスシールドを導入した。弟子はマスクとシールドを着けて照喜名朝國師範(48)の話を聞き、歌う時はマスクを外しシールド越しに歌う。師範の指導もシールド越しだ。導入のきっかけは、栃木で同流派の研究所を開く川野辺幸雄さん(69)が送ってきた写真だった。写真には、正面と左右を透明シートで覆った状態で歌う姿があった。シートは指導時に飛沫(ひまつ)の拡散を防ぐため、川野辺さん自ら製作。椅子と正座用の2パターンを用意し、外での指導などに持ち歩けるよう組み立て式にした。朝國師範は「本土は沖縄より(コロナ対策が)進んでいると感じた」と振り返る。

自作のシート越しに歌う川野辺幸雄さん(川野辺さん提供)

 取材した日、研究所では1メートルほどの間隔を空けて9人の弟子が座り、指導を受けていた。入り口には消毒液が置かれ、定期的に換気が行われる。朝國師範が歌い始めると、生徒も一緒に歌い出した。場所によってはシールドが天井の蛍光灯の明かりを反射し、師範の表情が見えにくい。息苦しくはなさそうだが、飛沫防止を意識してか、顎が引き気味になり、歌いにくそうに感じた。

 弟子の潮平剛さん(53)=宜野湾市=は「自分の声がシールドに反射して響く分、先生の声が聞こえにくい」と戸惑っていた。

 朝國師範は「安冨祖流は師匠の手や指、口、のどなど歌う姿を見て真似ることを大切にするため、マスク越しの指導は難しい。シールドは確かに細かい声が聞きづらい。まだまだ工夫が必要」と語る。一方で「研究所が休みの間に辞める弟子も出ると思っていたが、みんな戻ってきてくれた。指導の悩みより、稽古ができる感動が大きい」と、指導に意欲を燃やした。
 (藤村謙吾)