「GoTo予定通りに」沖縄観光業者ら期待 夏需要切実「ないと倒産」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 政府が旅行費用を支援する「GoToトラベル事業」が7月22日から始まる。宿泊を伴う旅行なら、22日以降は最大で1人1泊当たり1万4千円が支援されるため、旅行需要喚起に期待が集まる。一方で東京を中心にした感染者増加などで開始時期を先延ばしするべきだという意見も全国の首長らから出ている。県内観光事業者の間では「感染対策を取りながら予定通り始めるべきだ」との意見が強い。約2~3カ月にわたって休業状態だったこともあり「事業が始まらないと倒産してしまう」との声も上がる。

 夏場が最盛期となる沖縄観光は、7~9月だけでホテルの年間売り上げの6割ほどを稼ぎ出すとされる。JTB沖縄の杉本健次社長は「夏の需要を失えば、他ではカバーしきれない」と指摘する。急激な需要蒸発で休業を余儀なくされた事業者らが頼みにする雇用調整助成金も、助成率などを引き上げる特例期間が9月末で終わる予定だ。観光関連事業者は夏場で一定の収益を確保しようと必死になっている。

 県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長によると、観光客向けの飲食店の中には事業開始に合わせて営業再開を予定する店も多いという。鈴木理事長は「飲食店はガイドラインを守って対策する。水際対策をさらに強化し、予定通り始めてほしい」と話した。

 ■感染対策強化

 観光客の本格的な受け入れに向けて、県内の事業者らは行政と連携して対策を進めてきた。県全体で統一したアクションプランを作成し、旅行者専用相談センターの設置など全国的にも先進的な取り組みをしている。県内の各企業でも、サーモグラフィーの導入や施設の人数制限など対策に取り組んでいる。

 那覇市内や恩納村でホテルを経営するかりゆしは、館内の消毒や飛沫(ひまつ)防止に加え、人との距離を保った宴会場の利用方法などを提案してきた。

 同社の玉城智司社長は「これまで対策はしっかりやってきた。観光客はウエルカムだ」と受け入れ姿勢を見せる。

 ■第2波の懸念

 一方他府県では、東京での感染者増加や九州地域などでの豪雨災害などから、知事や市長から開始時期の見直しを求める声も上がっている。

 東京商工リサーチ沖縄支店の友利政人支店長は、仮に事業が開始されて感染が拡大し、再び人の動きが止まれば「第1波よりさらに経済は悪くなり、経営力の喪失につながる」と危機感を示す。これまで資金の蓄えで食いつないでいた事業者も第2波では資金繰りが厳しくなり、あきらめ感が強まると分析し「(22日の事業開始は)時期尚早ではないか」と話した。
 (中村優希)