【深掘り】「基地から感染」不安がついに 運転手が出入りできた事情


【深掘り】「基地から感染」不安がついに 運転手が出入りできた事情
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 米軍関係者と接触歴のあるタクシー運転手に感染の疑いがある―。県に一報が入ったのは15日夜だった。16日朝、陽性の検査結果が判明する。「基地の外に出てきてしまった。ショッキングだが、さらなる拡大は食い止めないといけない」。県幹部は焦りを募らせた。

 基地のフェンスを越え米軍関係者から県民に感染が広がる事態はこれまでも懸念されていた。県などが米軍関係者と接触した可能性のある北谷町の飲食店従業員ら130人のPCR検査を実施し、全員の陰性で胸をなで下ろしたのは14日のことだ。15日には玉城デニー知事が上京し、政府に感染拡大防止策の徹底を要請。タクシー運転手の感染判明は、政府と県が連携して対策に当たる機運が高まった直後のことだった。

 県は今回のタクシー運転手の感染経路について、米軍関係者との接触による感染の可能性が高いと指摘する。ただ沖縄防衛局などはタクシーに乗っていた人物は特定できておらず、米軍側が調査している段階だとして、「推測の域」を出ないとの考えだ。

 タクシーが基地内に入れたのはなぜだったのか。在沖米海兵隊は今月11日付で、新型コロナに関する警戒レベルを「B(ブラボー)」から「C(チャーリー)」に引き上げた。「C」ではタクシーなど公共交通機関の使用は禁じられる。ただ、タクシー運転手が最後に勤務したのは今月8日といい、「B」の期間中で米軍関係者のタクシー使用は禁止事項に含まれていなかった。

 そのため「タクシーを使ったことや、基地の外に出たこと自体は違反ではない」(外務省関係者)という。

 県と米海軍病院などは15日から新たに協議の場を設けている。今回のタクシー運転手と同様のケースが発生している可能性は排除できない。警戒レベルが引き上げられる以前に、米軍関係者が基地の外で取った行動が県民に感染を広げていないかどうか、行動履歴の把握や情報共有は急務となっている。(明真南斗、當山幸都)