感染リスク避けられぬ従業員 米軍借り上げの北谷ホテル 出国者専用でも検査の仕組みなく


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 在沖米海兵隊は来週から借り上げた北谷町のホテルについて新たに沖縄に入ってくる米軍関係者の隔離に使うことをやめる。代わりに沖縄を出る米軍関係者を滞在させることに使う。県や町は比較的リスクが小さいと考えて問題視していない。米軍基地内でクラスター(感染者集団)が発生している中、ホテルに入る前にPCR検査を受ける仕組みはない。専門家は「従業員やホテル周辺に感染リスクが発生する」と指摘している。

 海兵隊は北谷町のホテルを借り上げ、入国した米軍関係者を対象に2週間の隔離措置に使っている。来週からは出国予定者の滞在用に切り替える方針だ。別のホテルでは既に出国予定者の滞在が始まっているが、米軍関係者たちは一般客と混在して施設を使っている。関係者によると、滞在中に外出可能で一般客と接触し得る状況もあった。

 県内で確認された米軍関係の感染者は累計141人に上る。特にクラスターが発生した普天間飛行場とキャンプ・ハンセンはともに海兵隊の施設だ。その関係者がホテルに入るにもかかわらず、検査さえ課されない。ホテルに無症状の患者が宿泊する可能性は否めない。

 群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師は「海兵隊の基地で多数の陽性者が発生しており、まだ全容が公開されていない。新型コロナ感染では無症状者からも感染するリスクがある」と説明した。

 その上でリスクを抑えるためには「ホテルに入る前の米軍関係全員にPCR検査をすべきだ。従業員の安全を守るため、県民へこれ以上広げないためにも、ホテルの従業員にも検査を毎週受けてもらうことをお勧めする」と語った。

 出国予定者がホテルに滞在する際にどのような感染対策が取られるのかは不透明だ。従業員と接触する場面を徹底的に排除できているのかなどが問われる。出国予定者を基地外の宿泊施設に泊めることについては県も北谷町も了解した。基地従業員らのPCR検査実施については検討が進むが、県は現時点でホテル従業員らを対象にした検査は予定していないという。

 県の糸数公保健衛生統括監は「感染対策の内容を確認し、どのぐらい感染のリスクがあるかを改めて検討する」と述べた。

(明真南斗)