経済対策は理解しているが… 米軍クラスター、ウイルス移入恐れ、医療脆弱 「Go To」実施へ地方首長の声


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 政府が22日から始める予定の観光支援事業「Go Toトラベル」。琉球新報が県内41市町村長に行ったアンケートでは、約7割に当たる29人が新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して延期を求めた。コロナ禍に苦しむ観光産業に対して、経済対策を講じることの必要性に理解を示しつつも、住民の不安が高まる中で事業の実施を急ぐ政府の姿勢に疑問を投げ掛けた。

 「延期すべきだ」と回答した山川仁豊見城市長は「東京都だけでなく、全国的に感染者が増加傾向にある」と指摘する。「Go To事業については賛成だが、22日からの実施は適切でない」とした。リゾートホテルが多く立ち並ぶ本部町の平良武康町長も延期を求めた。「高齢者の多い地域で住民の命を守る責任ある者として延期を望む。この時期に迎え入れることは難しい」と記述した。国に対し「医療体制は地方に行けば行くほど脆弱(ぜいじゃく)だ。経済面だけでなく、その点をもっと考慮してほしい」と求めた。

 「予定通り実施」と回答した7人は、感染対策を徹底した上で観光産業への支援を急いだ方がいいとの立場だ。渡具知武豊名護市長は感染者が増加していることを懸念しつつも「観光産業を再び軌道に乗せる必要がある」と強調した。新しい生活様式の徹底など、感染防止対策を行った上で「新型コロナに対応した観光スタイルの確立を目指すことが望ましい」との考えを示した。

 アンケートでは同事業について「延期」「予定通り」「中止」の3択で尋ねたが、選択肢にない「その他」と答えた首長が4人おり、市町村長の苦悩がうかがえた。城間幹子那覇市長は、観光業界がコロナ対策に努めていることから「観光客の受け入れ体制は整ってきている」と見ている。一方で、県内や全国で感染が広がっている状況に「不安を感じる方も多いと思う」と述べた。「刻々と感染状況が変化する中で、示された選択肢のみで答えることは困難」と答えた。

 アンケートでは「Go Toトラベル」に合わせて市町村で誘客キャンペーンを実施する予定があるかも尋ねた。宜野湾市は市内宿泊施設の利用客に、市内事業者で活用できるクーポン券を配布する。今帰仁村はイベントを企画しているという。