【記者解説】那覇軍港移設、基地機能強化の恐れも 透ける浦添市長選にらんだ動き


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那覇軍港の移設予定地。奥中央はサンエー浦添西海岸パルコシティ=15日正午ごろ、浦添市西洲(小型無人機で撮影)

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設を巡り、松本哲治浦添市長が代替施設を北側に配置する案の受け入れを表明し、県、那覇市と事実上、北側案で合意した。軍港移設は、基地負担の県内での「たらい回し」という点で名護市辺野古の新基地建設と常に比較される。玉城知事は県民の利益につながる軍港移設と辺野古新基地建設は異なるとし、県民に理解を得たい考えだ。

 ただ、那覇軍港の返還決定から46年、浦添市が受け入れからも約19年が経過し、状況は大きく変わっている。3者会談後の取材に玉城知事はあくまで容認の立場を堅持したが、実際に理解を得られるかどうかは不透明だ。

 県は、基地機能が強化される辺野古新基地建設とは異なると説明してきたが、詳細な設計は決まっておらず、機能強化の懸念は拭えない。

 一方、松本市長が受け入れを決断した背景には、来年2月に現在の任期を満了する松本市長が3期目を目指す上で支持基盤の一つである経済界からの早期決着を求める声に応え、保守を一本化して選挙戦に臨もうとする思惑が透ける。

 市内の建設業界を中心とする経済界から早期の決着を求める声は高まっていた。3期目の選挙を戦う上で、このまま南側案に固執し計画が遅れれば、経済界を中心に対抗馬を模索するとの圧力もあった。保守分裂を招きかねないとの見方もあった。松本市長は9月にも出馬を表明するとみられ、18日の北側案受け入れは本人にとって「絶好のタイミング」(市関係者)だったと言える。

(明真南斗、荒井良平)