辺野古サンゴ移植、沖縄県が新たな提訴「農水省の指示は違法」 高裁那覇支部


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて沖縄防衛局が申請しているサンゴ類の移植について、沖縄県は22日午後、国を相手取って福岡高裁那覇支部に訴えを起こした。6月に総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会(係争委)が県の審査申し出を退けたことを不服だと判断した。地方自治法に基づき「農林水産省がサンゴ移植を許可するよう県に指示したことは違法だ」と主張する。

 係争委の決定に対する提訴期限を迎えた22日午後3時半すぎ、県の弁護士らが高裁に訴状を持ち込んだ。玉城デニー知事はこの日夕、県庁で報道陣の取材に応じる予定だ。農水省の是正指示について県は、地方自治体への国の関与は最小限であるべきだという地方自治の原則に反すると訴える。サンゴ移植についてはサンゴの生存率を高めるために慎重な審査が必要であることも裁判で主張していく見通しだ。

 県の提訴に対し、国は「農水省の是正指示は適法だ」と反論する。埋め立て事業が進んでおりサンゴを移植しなければ死滅することから移植を許可すべきだと訴えるとみられる。

 係争委の審査を経た裁判は高裁から審理が始まるため、比較的早いペースで判決確定に至る見通し。

 沖縄防衛局は2019年4月と7月、県にサンゴ類の移植許可を申請した。県の審査が続いていた2月28日に農水省は移植を許可するよう県に指示した。県は従わず、3月6日に是正指示の取り消しを要求した。農水省は指示を取り消さず、県は3月30日、係争委に審査を申し出た。その後、係争委は6月19日、県の訴えを退けた。

 現在、県と国との間では、県による辺野古の埋め立て承認撤回の効力が争われている「抗告訴訟」が続いており、今後は二つの裁判が並行する。
【琉球新報電子版】