めざせ「しまなみ海道」 自転車旅を沖縄観光の目玉に りゅうぎん総研リポート


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離島ポタリングを楽しむライダーたち=2013年9月、津堅島

 自転車で周遊する「サイクルツーリズム」の環境を整備することで沖縄観光の新たな呼び水にしようと、りゅうぎん総合研究所の及川洋平研究員はこのほど、沖縄観光における「サイクルツーリズム」戦略についてリポートをまとめた。サイクリング愛好者らはミドル層やシニア層が多く、滞在日数も長いことなどから、観光消費額が見込めることなどを指摘。一方、先進事例と比較するとルートの整備が進んでいないことなど沖縄の課題を上げた。

りゅうぎん総合研究所の及川洋平研究員

冬も快適、長期滞在に期待

 リポートは国土交通省の「ナショナルサイクルルート」に認定されている「しまなみ海道サイクリングロード(広島県、愛媛県)」で、欧米豪露などから誘客に成功している事例を紹介している。県主導で(1)推奨ルートを示すブルーラインの設置(2)安全な走行区間の確保(3)サイクルオアシスによる住民参加型のおもてなし―などの取り組みをまとめた。

 及川氏の調査によると、県内ではレンタサイクルを展開する事業者が30社以上あり、一定の市場規模がある。レンタサイクル事業者らへの聞き取りでは、年代別で最も利用している年代は40~50代で全体の59・5%を占めている。利用日数は4日以上レンタルするケースが多いことから、自転車で周遊する観光客は滞在日数が多い傾向にあると考察した。

 さらに、県内では夏場に貸出台数が少ないが、それ以外の時期に貸出台数が多いことが明らかとなった。事業者への聞き取り調査では、2019年1月の貸出台数を1とした場合、3月の1・33が最も多く、入域観光客数が多い夏場(6~9月)は0・6台と低い傾向にあった。

 沖縄は路面凍結がなく冬場も動きやすい温暖な気候のため、観光閑散期にサイクルツーリズムを推進することで他地域との差別化を図り、需要を見込めるとの見解を示した。

 ただ、県内のサイクルルートは断片的で、目的地をつなぐ明確な表示もない。さらに、自転車が安全に走行できる区間の整備は市町村によってばらつきがあるなど、環境整備が追いついていない。及川氏は愛媛県では県の主導があったからこそ、民間にも取り組みが広がっているとの見解を示した。その上で「沖縄でサイクルツーリズムを推進するには、ルートの連続性が必要となる。市町村間の協力に向けても、県の強力なリーダーシップが必要となる」との考えを述べた。


風景とフレンドリー「世界有数」 マナーとルート整備を 振興協・森理事

沖縄のサイクルツーリズムの将来性について語る県サイクルスポーツ振興協会の森豊代表理事=22日、南風原町の沖縄輪業沖縄のサイクルツーリズムの将来性について語る県サイクルスポーツ振興協会の森豊代表理事=22日、南風原町の沖縄輪業

 県サイクルスポーツ振興協会の森豊代表理事は、沖縄におけるサイクルツーリズムの将来性について「1年中乗ることができ、山や海などの風景、地域のフレンドリーさを含めて世界でも有数の場所だ」との考えを示す。森代表理事が勤務する沖縄輪業では年間7千台のレンタルがあり、約6割が台湾や香港など海外客が占めるなど、インバウンドにも人気となっている。

 森代表理事によると、今年に入り新型コロナウイルス感染症の影響で貸出台数は減少しているが、昨年11月ごろまでは右肩上がりで増えていたという。レンタサイクルはマーケットが広く、自転車で数日かけて旅をする層のほか、気軽に街を散策するなど「ポタリング」の需要もあり、今後の市場拡大にも期待を込める。

 森代表理事は、サイクルツーリズムの発展には道路の左側を走る自転車側のマナー順守と、自動車も自転車が車道を走ることを意識して譲り合う相互理解が必要だとの考えを示す。「車道側に自転車が走れるルートを引いたり、自転車が見える高さの看板を設置したりなど走りやすい環境整備により、サイクリスト(自転車愛好家)らが地域を訪れるきっかけになるのではないか」とサイクルツーリズムの浸透に期待を込めた。