コロナ禍と米軍基地 沖縄差別の新たな表出、地位協定による追加苦難<佐藤優のウチナー評論>


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 23日、東京都における新型コロナウイルスに感染した人が366人いたことが確認された。1日あたりの感染者が300人を超えたのは初めてだ。同日、東京都の小池百合子知事は、「4連休の外出はできれば控えていただきたい」と改めて要請した。

 都内は緊張した空気になっている。医療崩壊への危機感も出始めている。

 〈日本医師会の中川俊男会長は22日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染が再燃していることから、23日からの連休について「我慢の4連休としてほしい。国民のみなさまには初心に帰って不要不急の外出を避けてほしい」と呼びかけた。/中川会長は「連休は気持ちが緩むが、急増している感染者数が激増すると、医療提供体制の崩壊につながる確率が非常に高い。4連休は一つの山場だ」と述べた〉(23日「朝日新聞デジタル」)。

 東京には、中央政府の機能が集中している。東京の感染状況は、政治エリート(国会議員、官僚)、報道関係者の認識に強い影響を与える。一言で言うと、これらの人々の関心が極端に内向きになっている。

 その結果、コロナ禍で、沖縄が置かれている特別の状況に対して目が向かなくなっている。

 〈在日米海兵隊は24日、沖縄の米海兵隊で新型コロナウイルスの感染者が新たに41人確認されたと公式フェイスブックで発表した。県内の米軍関係者の累計感染者は204人となった。県内感染者の164人(24日正午現在)を大きく上回った。/二つの米軍基地ではこれまで、クラスター(集団感染)が発生したとしてロックダウン(封鎖)したとしている〉(25日本紙電子版)。

 〈玉城知事は、在沖縄米軍の感染拡大について、「米軍基地内で爆発的な感染が起こっている。どんどん増えてクラスターになっている。国は基地従業員の安全安心も含めて危機感を持って対応するべきだ」と指摘した〉(同)。

 感染症対策に関して、県も国も在日米軍基地や米軍人・軍属に対して、直接、措置を取ることができない。米軍が発表する感染者数が真実であるかも、確認する術がない。日米地位協定において、米軍人・軍属と米軍基地は半ば「治外法権」的な状況に置かれているからだ。

 現時点で沖縄に米軍人が何人いるかについても、それが軍事秘密に属するとして米国は明らかにしていない。日本の陸地面積の0・6%を占めるにすぎない沖縄県に在日米軍専用施設の70%が所在する。この不平等な状況を中央政府は改めようとしないばかりか、辺野古に新基地を建設して、沖縄の基地負担を強化しようとしている。沖縄は構造的に差別された状況が現れている。

 コロナ禍で、米軍関係感染者数が県内感染者数を大きく上回るというような事態も中央政府の差別政策がもたらしたものだ。この現実が沖縄以外の日本の新聞やテレビからは伝わってこない。県が積極的に中央政府と日本のマスメディアに対して在日米軍施設の過重負担によって、コロナ禍においても沖縄に追加的苦難をもたらしている事実を訴えた方がいいと思う。

(作家・元外務省主任分析官)