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高校生ライダー・仲村瑛冬「全日本」フル参戦へ 世界目指しアクセル全開<ブレークスルー>


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車体を路面すれすれまで傾け、コーナーを高速で曲がる仲村瑛冬=5日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット(寺嶋宏樹氏提供)

 高校生ライダーの仲村瑛冬(えいと)(17)=沖縄市立美里中―NHK学園高2年、犬の乳酸菌.jp/プリミティブRT所属=が、来月開幕するバイクレースの国内最高峰・サーキットシリーズ「全日本ロードレース選手権」に初めてフル参戦する。地方レースで着実に実績を積み、出走権を勝ち取った。えりすぐりのトップライダーが集うが、幼少期から培った優れたバランス感覚やブレーキング技術を武器に「表彰台を目指す」と高い目標を掲げる。将来の夢は世界中のトップライダーが集うレース「Moto GP」への参戦。世界への登竜門に、沖縄のホープが挑む。

■4歳でバイクに

 初めてバイクにまたがったのは4歳の時。二つ上の兄・英さん(19)の影響で子ども向けのポケットバイク(50cc)に乗り始めた。「アクセルをひねるだけで進むのが楽しかった」と遊び感覚で大会にも出場し、県内では優勝も経験。中学1年だった2015年には100ccのミニバイク全国大会で準優勝を果たし、初めて全国の表彰台に上がった。勝負の醍醐味(だいごみ)を知り「目標を持って走るようになった」。

 有望な若手を育成する鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)で腕を磨き、17年には全5戦で競う岡山国際ロードレースで年間優勝を達成。翌18年には実績が認められ、全日本への参戦に必要な国際ライセンスを取得した。

 幼少期から見守ってきた元競技者の父・英明さん(44)は「ブレーキを遅らせてもコーナーに入ることができる」とスピードを生かしつつ曲がりきるコーナリング技術に目を見張る。いとこには現在県勢でただ一人、アジアを拠点に活躍する国際ライダーの仲村優佑(26)がおり、刺激も多い。「下半身の使い方やブレーキ、練習法は勉強になる」と技術を盗む。

全日本ロードレース選手権への意気込みを語る仲村瑛冬=15日、読谷村のククル読谷サーキット

■鍵はコーナリング

 全日本は8月8、9の両日、宮城県のスポーツランドSUGO(3737メートル)で開幕する。仲村が出走するクラスはJ―GP3(250cc)。今年は新型コロナウイルスの影響で全7戦から全4戦にシリーズが短縮された。順位ごとに付与されるポイントで総合王者を決める。全日本のレース出場は経験しているが、シリーズを通じての参加は初めてだ。

 最軽量のJ―GP3は最高速度が220~230キロ。速度は大排気量のクラスに比べ劣るが、その分コーナーでの減速幅が少なく、コーナリングスピードは大排気量クラスをしのぐこともある。いかに速いスピードを維持して曲がるかが勝敗の鍵を握る。会場のスポーツランドSUGOでの出走は初めてだが、今月28~30日のテスト走行では「高低差やコーナーのラインをしっかり確認したい」と着実に準備を進める。

 過去の年間王者も参戦し、アジアなど国際大会への出場につながる可能性がある大会。「強い選手はコーナーの速度が全然違う」とレベルの高さも自覚しており、ステップアップのきっかけにしたい考えだ。

 通信制の高校で学びながら、伯父の幸之助さん(50)が営む東海輪業(沖縄市)でバイク整備を担う。「マシンの仕組みが分かって勉強になる」と貪欲に成長を求める。競技を始めて既に13年だが、まだ17歳。無限大の伸びしろを持つ若手ライダーは「世界で活躍する選手になる」という大きな夢を原動力に、アクセル全開で突き進む。 (長嶺真輝)