移動自粛や休業要請なしに安堵も、神経とがらせる観光業界「感染出れば地域から客離れる」


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 新型コロナウイルスの警戒レベルを第2段階の「流行警戒期」に引き上げたことに伴う対策を発表した玉城デニー知事は、経済活動への影響を考慮し、28日時点では県境をまたぐ移動自粛や事業者への休業要請を見送った。「渡航自粛をすべきでない」との意見が強かった観光業界からは、県の対策を評価する声が上がった。一方で、那覇市松山地区でクラスター(感染者集団)が発生した疑いが生じており、飲食関係者は感染の飛び火に危機感を募らせる。

 玉城知事が渡航自粛を求めなかったことについて、県ホテル旅館生活衛生同業組合の中村聡専務理事は「業界の声を受け止めてくれた。ウィズコロナに向けて対応していくしかない」と安堵(あんど)の表情を見せた。その上で「今後、感染者が増えて病床不足にならないために軽症患者の受け入れ可能なホテルの借り上げを急ぐべきだ」と注文した。

 県は8月上旬にも軽症患者の受け入れ施設を5施設ほど借り上げることで調整を進めている。

 一方、県内のある観光事業者は「従業員はいつ自分が感染するか分からないという危機感を持っている」と話す。

 これまでに従業員から感染者が出た経験があり、施設のサーモグラフィー設置や巡回消毒など対策を取ってきた。

 那覇空港では発熱者に対する問診を強制できないことや、空港内での抗原検査について医師が確保できていないなど課題が残っている。人の移動が活発化することによる感染拡大への懸念はぬぐえず、同事業者は「とにかく水際対策だ。沖縄に入ることができる人のラインをはっきりさせるべきだ」と訴えた。

 県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長によると、加盟するバーやスナックなどの店舗でガイドラインの順守は全体の3割程度にとどまっているとみられる。

 下地理事長は「大丈夫だろうという甘えから(対策が)進んでいない面もある」と神経をとがらせている。今後、組合として加盟店舗の感染防止対策について抜き打ちで確認することを計画しているという。対策ができていない店には、カウンターに張るビニールシートやカラオケ用マイクのカバーなど、必要な対策や道具の入手先など細かい情報提供をしていく。

 下地理事長は「感染が出れば、その店舗だけでなく地域全体から客が離れてしまう。防御策を徹底しないと、取り返しがつかないことになる」と強調した。