【記者解説】走り出す北部基幹病院 経営安定と2病院の連携課題に


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 北部の安定した医療体制を築くため、県立北部病院と北部地区医師会病院を統合する北部基幹病院の基本的枠組みに玉城デニー知事が28日に合意した。新病院整備が走り出した。一方、県議会からは人員配置や収益の事業経営に関して懸念も指摘されている。今後の整備協議会では運営方法や経営能力などを焦点に、整備に向けた迅速性に加え、統合に伴うしこりを残さないための関係構築が重視される。

 統合に向けて北部と県の協議が始まった当初、新しい開院時期は2023年度と想定していた。現在は当所よりも3年遅れの26年度を見込む。ことし2月に北部12市町村が合意書案を受け入れ、今回の合意まで時間を要したことについて、玉城知事は「収支シミュレーションなど確認しておくべき課題の検証を行い、慎重に検討を重ねてきた」と明かした。

 北部市町村会の當眞淳会長は「中途半端な形で進めると後で問題が生じる。かなり時間がかかったが必要な時間だった」と受け入れた。知事は合意後、検証していた課題解決について記者団に問われると「ほぼ(解決した)」と答えた一方、基幹病院が開院するまで「両病院の連携が重要だ」と強調した。2院間での医療機能の見直しや分担、機器の共同利用などについての議論もあり、含みを持たせた。

 北部基幹病院整備を巡っては、名護市長選や県知事選など主要選挙があるたび、政府高官が沖縄入りして言及するなど「政争の具」としての様相も強めていた。北部市町村会の首長らが口をそろえるように、北部住民は地域医療と政治問題がリンクされることを望まない。安定した医療体制の一刻も早い提供が求められている。今後、国による基幹病院への支援のあり方も注目される。
 (阪口彩子)