沖縄県労連(穴井輝明議長)はこのほど、最低生計費試算調査を実施した。それによると、那覇市で25歳男性が1人暮らしするには、1カ月当たり24万6316円(時給換算で1417円)、女性では24万9272円(1434円)が必要で、東京都北区の24万9642円と同等の生計費がかかることが分かった。穴井議長は「最低生計費なしに生活できているのは、その賃金に合わせて生活しているからだ。本来あるべき姿ではない」と述べ、最低賃金を全国一律で1500円以上に引き上げることの必要性を訴えた。
調査は2020年2月4日から5月31日に、県労連が静岡県立短期大の中澤秀一准教授と共同で実施した。最低賃金に近い水準で給与が支給される働き始めの県内10~30代の単身者を対象に、962人から回答を得た。生活パターンと所持品を調べる調査を行い、原則7割以上の人が持つ所持品を生活必需品とした。6月25日に当事者を招いて合意形成会議を開き、試算調査のため、住居地や車を基準とすることを決めた。
中澤氏は全国展開の店では価格が統一されるため、「衣服などは全国で差は無い。家賃と交通費で一番差が出る」と指摘した。
東京の家賃は、沖縄に比べて2万円ほど高い。一方、沖縄では電車や地下鉄などの公共交通網が未発達で、通勤に自動車が必要な場合が多い。中澤氏は「中古車でも維持費に毎月2万5千円ほどかかる。この差が相殺され、トータルでは生活費に差がない」と説明した。中澤氏は15年から21都道府県で調査を実施しており、生計費は全国でそれほど差が無いという。
会見に同席した県公務公共一般労働組合の長尾健治委員長は「最低賃金のアップは、一番底辺で働く労働社の賃金の底上げだ。底上げを止めれば、ますます弱い人たちを苦しめる」と指摘した。生協労連コープおきなわ労働組合の伊禮理江子書記長は「ダブル、トリプルワークをしている職員もいる。『自立したくてもできない』『結婚もできない』との声も上がっている」と話した。
中澤氏は「今の沖縄の最低賃金では、フルタイムで働いても14万円に届かない。税金や社会保険料を引いて10万円弱では、国の総体的貧困率と同等だ」と述べ、賃上げの必要性を訴えた。