<識者談話>辺野古抗告、県側に厳しい判決か 戦略見直しを 本田博利・元愛媛大教授


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本田 博利氏(元愛媛大教授)

 今回の抗告訴訟では、自治体が条例や規則に従わせるための訴訟は起こせないとする、2002年の「宝塚パチンコ条例事件」の最高裁判例が高いハードルとなった。わずか2回の弁論で結審し、承認撤回の適法性という「本論」にまで審理が至っていない。この流れをみると、県側には厳しい判決が予想される。

 国がよりどころとする「宝塚裁判」の判例については、行政法学者のほとんどが「判例を見直すべきだ」と主張している。

 ただ、司法の扉が完全に閉ざされているとは言えない。泉佐野市が「ふるさと納税訴訟」で最高裁の法的救済がなされ、事実上“完勝”した点は、地方自治法上の争いではあるが、地方自治が死んでいなかったことを示した。

 今回の訴訟はある意味で、宝塚の判例を覆すための好機だったが、残念なのは判例変更のために行政法学者の協力を幅広く求められなかったことだ。

 抗告訴訟は難しい局面に入ったが、辺野古周辺の住民が起こした訴訟では、那覇地裁が一部原告の適格性を認め、実体審理に入ろうとしている。この訴訟の行方が、辺野古を巡る裁判の、戦略のメルクマールとなる可能性がある。