[日曜の風・香山リカ氏]コロナ感染急増 沖縄こそ手厚いケアを


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 全国で新型コロナウイルスの感染拡大が続く。特に沖縄県では7月8日に69日ぶりの感染者が報告されてから、その数が急増している。

 沖縄には感染に関係する特有の状況がある。ひとつは、7月から感染者が急増している在沖米軍の問題。そして、国を挙げての「GoToキャンペーン」が行われる中、県外から沖縄を訪れる人が増加していることだ。

 米軍を内包する社会構造、そして観光に依存せざるを得ない経済構造。考えてみれば、これは新型コロナに始まったことではなくて、沖縄がずっと背負わされてきた問題だ。もっと言えば今回もまた、その本質的な問題、つまり構造的に沖縄だけが日本の中で不平等な状況に置かれていることが、県民を苦しめ健康に被害を与えているのだ。

 だとしたら、これは沖縄だけにまかせてよいことではない。政府や日本の各地が「まず沖縄を救え」と手を差しのべなければならないはずだ。それにもかかわらず、国は知らんふり、そしてほとんどの地域が「自分のことで精いっぱい」という内向きな態度を取っている。基地を押しつけて産業が育たないようにし、都合のよいときだけ「癒しの島」と遊びに来て、問題が起きたときは「自力でなんとかして」というのはあまりにひどい。

 幸い沖縄には日本でも屈指のすぐれた医師たちがおり、全力で新型コロナウイルスの感染予防や治療につとめている。先ごろ行われた那覇市松山での飲食店従業員2千人を対象にした大規模PCR検査など、日本でほかのどの地域でも行われていない先進的な取り組みだ。

 とはいえ、県内だけでは人手や設備には限界がある。政府や日本医師会は、「全国平等に」という発想をやめて、構造的に不利な状況を作り上げられ、いままた被害を受けている沖縄にこそ手厚いケアをすべきだ。県民や医療従事者もどんどん要求してほしいと思う。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)