沖縄市で台湾料理ふるまい34年 キャサリン惜しまれ閉店


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最後の日に厨房に立つ「台湾料理 凱莎琳」の店主國場清玉さん=10日、沖縄市中央

 【沖縄】沖縄市中央にあり、台湾出身のキャサリンこと國場清玉(せいぎょく)さんが営む「台湾料理 凱莎琳(キャサリン)」が10日、閉店した。突然の閉店にもかかわらず、この日は常連客らが続々と足を運んだ。4坪(約13平方メートル)から始めた店は地域の人たちに愛され、34年間で35坪(約115平方メートル)まで大きくなった。沖縄市が「第2の故郷」というキャサリンさん。一人で店を切り盛りし、おいしい料理を振る舞ってきた。

 閉店を知らせる紙を張り出したのは前日の9日。県内で新型コロナウイルスの感染が広がる中、閉店前に客が殺到し密になるのを避けるため常連客にも伝えなかった。「常連客には叱られる覚悟よ」と苦笑いするキャサリンさん。大事な常連客たちの健康を第一に考えた。

 約35年前に沖縄に移住し、商売をしようと県内各地を回った。外国人でにぎわい、異国情緒あふれる沖縄市に引かれ「私の居場所はここだ」と思った。周囲からは「商売をするなら那覇だ」と言われたが、沖縄市に店を出すことを決め、シャッターが閉まっている店舗を見つけては「貸してくれないか」と懇願した。

 ようやく見つけた4坪の店舗でアクセサリー店を始めた。客に振る舞った手料理が好評を得て、いつしか台湾料理の専門店になっていった。「食は人に癒やしを与え、安心させるでしょう。お客さんが食べたときの笑顔が大好き」と笑う。

 10月に閉店する予定だったが、新型コロナの影響で営業自粛を迫られ、時期を早めた。苦渋の決断だが「元気なうちに自分で閉められることはある意味で幸せだ」と気持ちを切り替えた。「支えてくれた地域の人たちには感謝の気持ちでいっぱい。これからは地域に恩返ししたい」と前を向く。閉店後は新たなことに挑戦するつもりだ。

 10年以上通う照屋正子さん(72)は「人柄が素晴らしく尊敬している。本当にお疲れさまでした」とねぎらった。閉店を人づてに知り店を訪れる客は途絶えず、キャサリンさんと慣れ親しんだ店との別れを惜しんだ。