【深掘り】警戒レベル最高なのに来県自粛要請しないのはなぜ? 県、観光業界に配慮


【深掘り】警戒レベル最高なのに来県自粛要請しないのはなぜ? 県、観光業界に配慮
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 県は当初8月1~15日としていた緊急事態宣言の期間延長に踏み切った。これで8月はほぼ1カ月、新型コロナウイルス感染拡大を抑え込むための緊急事態宣言期間となる。経済界からは延長に反対の意見もあったが、玉城デニー知事は医療崩壊を防ぐため、同宣言の2週間延長という厳しい決断に至った。警戒レベルを判断する県の七つの指標のうち五つで第4段階に達し、「この状況で引き上げないと理解を得られない」(県幹部)と判断したからだ。4、5月の「第1波」に続き、全国で唯一、2度も1カ月間の緊急事態宣言に突入する異例の夏となった。

■全国最多の状況

 「確かに最初は観光客からの移入例やキャバクラなどから発生した。けれどもそれから徐々に県内に広がり、市中感染が蔓延(まんえん)している。ここで引き下げると元に戻ってしまう。県外ではなく、われわれ県民がどうするかだ」。県幹部の一人は今回の判断の意図を説明し、理解を求めた。

 8月1日以降、人口10万人当たりの1週間の新規感染者数は40・91人で連日全国最多の状況が続いている。ただ玉城知事は県の分析では、10日までの判明分では県内経路の感染が4割で、県外は1・7%程度だったと説明した。

■苦渋の表情

 県は大打撃を受ける観光業界への配慮から県外からの渡航自粛要請には踏み切らず、県外からの渡航には引き続き「慎重な判断」を求めた。県によると、緊急事態宣言の効果もあり、那覇空港の8月の週末の利用者数は3月と比べて4割減となった。延長によりさらに減るとみられ、事実上の「渡航自粛要請」になるとみられる。

 警戒レベルの引き上げは五つの指標が第4段階に達した時点で議論になっていた。ただその時点では「県民に自粛を求める一方、対策が生煮え」(県幹部)だったため時間を要した。

 県が事前に決めた対策実施例では飲食店は午後8時までの閉店になっていたが、今回、外出を控える時間帯は「夜10時以降」に設定した。飲食業関係者から「8時までに店を閉めると売り上げの8割は減る。でも10時までなら5割は守れる」と要望があったからだという。

 経済政策を担当する県幹部は「感染防止と経済社会活動の両立はとても難しい。医療関係者は命を守るが、われわれは生活も守らないといけない。どう決定しても必ず批判を浴びる」と苦渋の表情を見せた。

■国に要請を

 一方、県議会与党最大会派の沖縄・平和の仲村未央代表は、県が沖縄への渡航自粛を求めない方針を示したことを念頭に「旅行者が出発する前に検査を受け、陰性を確認した上で移動可とする仕組みを国挙げて構築すべきであり、県もそれを強く国に求めるべきだ」と指摘した。与党内では、来訪者の検査体制を受け入れ地のみで確保することは過重負担につながり、医療体制が圧迫しかねないとの懸念が渦巻く。

 今回の判断の成否は、県民一人一人の協力に掛かっている。

(梅田正覚、吉田健一)