家計維持のためWワーク、シングルマザー「先が見えない」 繁華街の収入絶たれ窮状


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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当初15日までとされた緊急事態宣言がさらに2週間延長した。繁華街への外出自粛呼び掛けにより、キャバクラ、スナックが集まる「夜の街」からはネオンの灯が消え、厳しい状況が続いている。しわ寄せはナイトワークでの収入を頼りにするシングルマザーにも。「先が見えない」。追い詰められた女性たちから悲痛な声が上がる。

「先が見えない」と語る那覇市の女性=14日、那覇市

 14日夜、那覇市松山では手持ち無沙汰な様子で通りに立つ客引きの姿が目立った。客引きの男性(24)は「休業補償がない商売だから、食べていくためには通りに立つしかない」と語る。休業要請中の1日から2週間も数軒のキャバクラ店が営業していた。客のほとんどは観光客で、県民の来店客を見ることは「ほぼない」という。

 「先が見えないのが何よりつらい」。那覇市に住む女性(32)はため息まじりにこう吐露した。6歳の息子と母親と暮らすシングルマザー。建築関係の会社で正社員として働くが、1年前から那覇市松山の飲食店でアルバイトを始めた。昼間の仕事の月収は16万円程度。子どもの保育料や食費などで出費がかさみ、「家計を維持するためにはWワークをせざるを得ない」が、そんな暮らしがコロナ禍で一変した。

 バイトする店は4月に休業。収入源の一つが絶たれた上、自宅で過ごす時間が増えたことで支出も増えた。女性は「何とかやりくりしているが、いつまでもつか」と表情を曇らせる。

 最近、勤めている会社でも人員整理の話が出始めた。コロナによる業績悪化で派遣やパートの同僚は雇い止めに遭った。「自分もいつクビになるか分からない。コロナの終息を願うばかりです」と祈るように両手を重ねた。

 「コロナは確かに怖い。でも、本音を言えば早く働きたい」。一人で5歳の息子を育てながら、松山のキャバクラ店で働くうるま市の女性(23)は声を絞り出した。7月末から勤務先が休業。唯一の収入源が途絶え「これからどうやって食べていけば」と途方に暮れる。休業で子どもと過ごす時間は増えたが、外出もままならない現状にストレスはたまる一方だ。

 コロナの終息が見通せない中、那覇市内では15日午後、困窮するシングルマザーのための食料支援の催しが行われた。「頑張って」。お菓子やパンが詰まった袋を渡す支援員の言葉に、沈んでいた女性の表情がやっと和らいだ。

(安里洋輔)