沖縄県庁地下の食堂「南天」が8月末で閉店する。沖縄そばなど定番メニューを低価格で提供し、県知事から周辺の学生まで多くの県民に親しまれたが、新型コロナウイルスの直撃を受けた。運営会社「南天Okinawa」をグループに持つオーディフホールディングスの普天間初子会長は「とても残念。県民の皆さんに育ててもらった。感謝しかない」と名残を惜しむ。
南天は1990年2月、現在の県庁舎が完成してすぐに開店した。普天間会長の娘で、同ホールディングスの村野勝子社長も大学時代に夏休みのアルバイトでホールに立った。その頃、カレーライスは280円。近くの那覇高の生徒らにも人気だった。あまりの安さに従業員が「単価を上げてほしい」と普天間会長に懇願するほどだった。
普天間会長は県職員の福利厚生施設として、栄養バランスを考慮しながらの低価格にこだわった。定番メニューのほか、県産肉や野菜、フルーツのフェアーも実施、日替わり定食もワンコインで提供した。白米だけでなく、玄米や冷ややっこを選べるメニューもあり、歴代知事や副知事も愛用した。
約300席ある店内は多い時は1日で600~700人が利用し、歓送迎会などの懇親会でも活用された。だが、新型コロナの影響で2月頃から客足が減り、最近では100人入らない日も出てきた。
厳しい中でも営業を続けてきたが、普天間会長は「従業員の雇用、生活の維持を最優先に考えた」とグループ内の別職場で勤務できるよう調整し、今回の決断に至った。閉店を知り、最近は利用客が増え出しており、31日は特別メニューで感謝の気持ちを伝える考えだ。