「ウイルスとの生存競争」イベントや展覧会どうする? アートイニシアチブがネットで議論


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アート関係者らが意見を交換した「アートイニシアチブオキナワ」主催のオンラインイベント=2日夜

 沖縄県内の芸術関係者の連携や人材育成などを目的に設立された「アートイニシアチブオキナワ」は2日夜、新型コロナウイルス感染拡大で影響が広がっているアートイベントの開催について、どう臨めばいいのかを考えるオンライントークイベントを開催した。県内のアート関係者ら34人が参加した。

 県立中部病院の循環器内科医師で医療情報科部長の久島昌弘さんが、感染症の専門家ではないコミュニケーター(伝達者)として個人の立場で参加し、コロナ禍の現状やイベントの開催を検討する際の注意点などについて解説した。

 久島さんは流行の状態を連日患者の発生がない「緑」、クラスターが検知されるなど流行の気配を感じる「黄色」、流行中の「赤」の3段階で説明。東京など首都圏については「黄色」か「赤」の状態で、観光流入のある沖縄も今後は首都圏のような状態に徐々に近づくと指摘。「ワクチンや獲得免疫ができるまでウイルスとの生存競争になる」として、自分や家族、他者にうつさないように感染防護策や対策を徹底する重要性を強調した。

 その上でアート関係のギャラリーや教室、イベントの運営については「流行の状態、イベントの空間と運用の要件に応じたガイドラインを策定し、それに基づいて運用、随時更新していく必要がある」と助言した。ガイドラインの運用で失敗した場合は「フィードバックして改善すればいい」と述べた。

 さらに、どう環境を整えれば多人数が集まる場の開催ができるか、絵画教室を例にあげて説明。「赤」か「黄色」の時期なら(1)体調やマスクのチェック(2)ドアを開けて入り閉めたところにアルコールジェルを設置(3)換気(4)マスク着用の徹底(5)いすやテーブル、道具の消毒(6)手指衛生(7)非接触の金銭授受―などを挙げた。

 久島さんの説明の後、アート関係者も加わりパネル討議が行われた。神奈川県在住の美術家、安里槙(しん)さんは首都圏での展覧会の開催状況について紹介。「作品を触って楽しむコーナーの設置を避けたり、ヘッドホンを通じたアートの説明を控えたりするなどの対策が取られている。観覧を予約制にする動きもあるが手間がかかり、気軽に見に行けなくなることを懸念し、模索している状態だ」と述べた。

 県内で絵画教室を開いている画家の平岡昌也さんは「教室では生徒全員に声を掛けながら教えていく。そのためオンラインでは指導するのが難しい側面がある」と話した。

 画廊沖縄の田原美野(みの)さんは久島さんの報告を受け、「展覧会などのイベントをどうしたら開けるのか聞くことができ、安心した。アートは作品の前で直接感じるものだと思う」と感想を述べた。オンラインで参加したアート関係者からは「ガイドラインの作成が急務だと意識付けられた」、「今だからこそアートが担うべき役割が何かを考える機会になった」などの感想が寄せられた。