早期産卵サンゴ、精子と卵は増量傾向 捕食されやすさに対応か 琉大・守田研究室


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 【本部】さまざまな種のサンゴの卵と精子が、広大な海の中でどのように出合うのか。未解明な部分が多い中、琉球大学熱帯生物圏研究センター・瀬底研究施設の守田昌哉研究室は、約10年にわたり繁殖の謎を研究し続けている。今年の調査では捕食されやすい早期の産卵では「精子と卵の数が多くなる」など、生存戦略への考察が深まってきた。

サンゴのサンプリングを行う守田研究室の北之坊誠也さん(左)、古川真央さん=6月4日、本部町の瀬底島近海

 県内では6月上旬に、大規模なサンゴの産卵が確認された。瀬底島近海では一般的に見られるサンゴ「ミドリイシ属」が少なくとも20種類以上いるとされ、県内でも高い多様性を維持している。守田研究室ではサンゴの精子や卵に含まれる遺伝子の多様性、“相手選び”のメカニズムに関して研究している。

 産卵は5~6月の大潮の前後に同調して起こる。卵と精子が入ったピンク色のカプセル「バンドル」が海中に舞い、海中はピンク一色に染まる。研究室の北之坊誠也博士、博士前期課程2年の古川真央さんらは6月4日、瀬底島近海でサンゴのサンプリングを実施した。

 バンドルを抱えたミドリイシ属10種の群体から、小さな破片を採集し、毎夜観察した。同月9日に産卵が確認されると、バンドルに含まれる精子や卵の数を顕微鏡で数えた。

いまだ未解明な部分の多いサンゴの生殖について語る守田昌哉准教授=本部町の琉球大学熱帯生物圏研究センター・瀬底研究施設

 実験データからバンドルに含まれる精子と卵の数は早期の産卵では多く、遅く産卵する種では少なくなる傾向にあった。

 北之坊さんらは、捕食されるリスクの高い産卵したての時に、多くの精子と卵を残し、生存するためだと考察。北之坊さんは「理にかなっている。次は卵のサイズを測るなど実験を進めていけば、仮説が立てられると思う」と語った。

 守田昌哉准教授は「多様性を保つには、どれだけのサンゴの群体が必要なのかの指標になる。今後は保全にも寄与できるのではないかと思う」と基礎研究の重要性を語った。

(喜屋武研伍)