焼け残った首里城瓦、舞台パネルで再生へ 県立芸大教授らが紅型の意匠施し


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首里城破損瓦の受け取りセレモニーで「首里節」を歌う県立芸術大学音楽学部の山内昌也教授=15日、那覇市の首里城公園

 昨年焼失した首里城の焼け残った瓦を利用し、舞台空間を創造するプロジェクト「Una―」(御庭(うなー))が13日、本格的に始動した。プロジェクトは、首里城の破損瓦を薄さと強度を兼ねそろえた「HPC(ハイブリッドプレストレストコンクリート)」のパネルに作り変える取り組み。パネルは完成後、琉球王国時代に冊封使の歓待のため御庭に設置された舞台のような琉球伝統芸能を演じる上質な空間づくりに活用される。プロジェクトは県が審査し、破損瓦を利活用するアイデアに認定された。

 プロジェクトは県立芸術大学音楽学部の山内昌也教授が考案した。運営する実行委員会も13日に始動した。実行委は山内教授が代表理事を務める琉球伝統芸能デザイン研究室をはじめ、「HPC」を開発したHPC沖縄、同製品を製造する技建のほか、琉球びんがた普及伝承コンソーシアム、okicomで組織する。

 「HPC」は、炭素繊維材などを使い、薄さと強度を両立させた革新的なコンクリート。機密性が高く、表面造形にもたけている。「Una―」のパネルは、約80キロの「HPC」4枚を組み合わせた一間四方(1坪)の大きさで、琉球紅型(びんがた)の意匠を施す予定だという。パネルは、アート作品として「Una―」と命名する。「Una―」は「舞台」として活用し、琉球古典音楽家が座り古典音楽を演奏することで、伝統と革新が融合した空間の創造が期待される。

HPCの表面造形例(HPC沖縄提供)

 15日に那覇市の首里城公園の守礼門前で開催した破損瓦の受け取りセレモニーでは、県の担当者が山内教授に、大人の手のひらほどの大きさの破損瓦100枚を渡した。山内教授は「風と共に恋しい人の下へ忍んでいきたい」と恋心を歌った「首里節」を歌った。その上で「瓦もこのような形で首里城を出るとは想像していなかったと思う。(焼け残った瓦に)新しい形で命を宿したい」と話した。

 HPC沖縄の阿波根昌樹代表取締役はパネル制作は技建の南城市の工場で行うとし「焼失した首里城正殿で使った赤瓦は与那原町の職人の手で復元された。与那原町の近くで生まれ変わることに意味を感じる」と感慨深げに話した。技建の津波古充仁常務は「瓦を配合する量など試行錯誤を繰り返して良い物に仕上げたい」と瞳を輝かせた。

(藤村謙吾)