【識者談話】米軍の言いなりか、那覇軍港移設先 行政は丁寧な説明が不可欠 江上能義氏


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 日米特別行動委員会(SACO)最終報告の大きな目玉が米軍普天間飛行場の返還と那覇軍港の移設だった。

 その意味から言うと、今回の浦添市の「北側案」受け入れ表明は一つの大きな決定であり、県、那覇市、浦添市の事実上の合意は大きな一歩だと思う。

 一方、名護市辺野古の新基地建設と同じように、那覇軍港の浦添移設が美しい海を埋め立てることに、市民、県民からすると「またか」ということになると思う。今後大きな反発があるのではないか。日本政府が浦添市の推す南側案について「米軍が難色を示している」と伝達した。

 米軍が「ノー」と言ったから、米軍の意向であれば、政府も県も浦添市も受け入れるのか、言いなりかとなってしまう。沖縄だけが我慢させられて自然がどんどん壊されていいのか。不満と疑問が出て来るだろう。行政は丁寧な説明をする必要がある。

 地方自治の問題にもつながる。米軍の意向に地方自治は従わざるを得ないのか。辺野古と違って浦添移設は民間港湾の整備もあるからいいのか。単純には言えないのではないか。

 米軍が民港を優先して、軍港を小さくするとは思えない。今でも日米安保が県民の日常生活に大きなインパクトを与えており、軍港が隣接することでいろいろな影響が出て来るだろう。

 確かに再開発が進み、西海岸整備で喜ぶ人もいるだろう。だが、海岸線に大きな道路ができ、サンエー浦添西海岸パルコシティが開業したことで、かつては気付かなかったかもしれない美しい海の存在に気付いた県民も多いはずだ。

 「基地の島」沖縄で基地が造られ続けている現実と、沖縄の将来を見据えて市民、県民も正面から考える必要がある。何より県、那覇市、浦添市は納得できる説明をする必要がある。

(政治学)