権力の暴走、アートで抗う 美術家ら表現を模索 オンラインシンポ配信


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(左から)高良憲義、新垣安雄、佐喜眞道夫、比嘉豊光の4氏が意見を交換したシンポジウム。中央の画面は洪成潭さん。李明福さんもオンラインで参加した=15日、宜野湾市上原の佐喜眞美術館

 「光州(韓国)・済州(韓国)・OKINAWA 抵抗の表現展」に出展した美術家によるシンポジウムが15日、沖縄県宜野湾市の佐喜眞美術館で行われた。沖縄から高良憲義さん、新垣安雄さんが出席。韓国から洪成潭(ホンソンダム)さん、李明福(イミョンボク)さんがオンラインで参加した。写真家の比嘉豊光さん、同美術館館長の佐喜眞道夫さんも加わった。国家権力の暴走などに対し、美術の表現を通して何ができるかについて意見を交換した。

 洪さんは軍の武力弾圧で多くの光州市民が犠牲となった1980年の「光州事件」当時、版画を用いて国民に実情を伝えた。洪さんは表現活動と権力について「現政権では表現の自由が一定程度確保されているが以前は違った。政権が変わると状況が一変する」と話した。

 李さんは代表作として、ソウルの中心に位置する米軍基地村、梨泰院を描いたシリーズなどがある。2010年に済州島に移り住んだ。李さんは「絵を通じて、国家暴力や歪曲(わいきょく)された歴史を正しく伝えたい」と話した。その上で「島での創作活動は始まったばかり。歴史を深く理解して作品を作りたい」と力を込めた。

 高良さんは沖国大ヘリ墜落、保育園への部品落下、小学校への窓落下など宜野湾市内での米軍関連事故や名護市辺野古の新基地建設、PFOSなどによる地下水汚染に警鐘を鳴らす作品を出展している。辺野古をテーマした作品について「軟弱地盤にもかかわらず建設を強行している。不必要だ」と述べた。

 新垣さんはトタン板に多くの穴をあけた1967年の「怒りのオブジェ」や、68年に那覇市与儀の野外展示場の使用を禁じた米軍への抗議の座り込みの際に携えたトタンを展示した。新垣さんは「これでいいのか、という怒りをぶつけた作品だ。不条理な状態は変わらない」と話した。

 シンポジウムはユーチューブのチャンネルを通じてライブ配信された。

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 洪、李、高良、新垣の4氏の作品を展示した「抵抗の表現展」は9月7日まで。沖縄アジア国際平和芸術祭2020(同実行委員会、すでぃる主催、琉球新報社など共催)の一環。県民は入場無料。問い合わせは同美術館(電話)098(893)5737。