【深掘り】なぜ違う?沖縄のコロナ分析 尾身氏「下火に」厚労省「ステージ4」


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野党合同ヒアリングで沖縄の感染状況について政府側に質疑する国会議員ら=18日、院内

 【東京】県内における新型コロナウイルスの感染状況の分析を巡り、政府や専門家の間で温度差が生じている。政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は19日の衆院厚生労働委員会で、個人的見解として「下火になっている」と語った。一方、同日の国政野党ヒアリングで厚生労働省の担当者は、分科会が示した指標に照らし、最も悪い段階の「ステージ4」だと説明した。判断材料の違いに起因するとみられるが、感染状況の認識は政府の対応にも影響を与えるだけに、野党は疑念を強めている。

 ■判断材料の違い

 尾身会長は国会で、沖縄の感染状況について、1人の感染者が平均何人にうつすかを表す指標「実効再生産数」が、直近では1を下回っているとし「下火」と言及した。医療提供体制が逼迫(ひっぱく)していることは認めつつ、人の移動の制限などについて「今は知事の判断を尊重したらいい」と述べるにとどめた。

 一方、厚労省の担当者は野党ヒアリングでステージ判断は都道府県が行うものだとしつつ「(ステージを判断する)九つの指標のうち、一つを除いてステージ4になっている」「4だという風にわれわれも認識はしている」と語り、状況判断の違いを印象付けた。

 政府の感染状況のステージは、医療提供体制の逼迫度合いなどを基に判断する。ステージ4は「緊急事態宣言など強制性のある対応を検討せざるを得ない」とされ、講じるべき施策に県境を越えた移動の自粛などが挙げられる段階だ。

 ■「線引き必要」

 ステージ4に当たるとなれば、沖縄に対する国の緊急事態宣言の発出が視野に入る。だが、人の移動を促す国の観光支援事業「GoToトラベル」の対象としていることと矛盾が生じる。ステージ4か否かは、国の政策判断に影響を与えるだけに注目される。政府側はステージ4と認識する一方、国の宣言発出やGo To事業の是非に慎重な姿勢を示す。野党側は「(宣言の発出とGoTo事業の対象から外す)どっちも認めたくないとしか思えない」(黒岩宇洋衆院議員)と疑念を強めた。18日のヒアリングでは県選出の屋良朝博氏は「どのような状況になればステージ4だと認識し緊急事態宣言を出して国が関与するのか、線引きすべきだ」と注文した。

 政府の新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生担当相は20日の会見で、沖縄の状況は陽性率が10%を割るようになり「一時に比べると、陽性率が下がってきている」とする一方、「(ステージ)3と4の数字が入り交じっている」と述べ、政府としてのステージ判断を示さない姿勢を強調。緊急事態宣言の発出や、GoTo事業への影響打ち消しを図った。

(知念征尚)