酪農家でつくる沖縄県酪農農業協同組合(八重瀬町)で、13年にわたり組合長を務めていた新里重夫氏が今月11日の理事会で解任されるなど、内部対立の事態が起きている。本来は2019年6月で任期満了だったが、総会で役員改選の議案が諮られず、組合長を含めた理事らが任期を超えて在職するという異例の組合運営となっていた。
解任動議を提出したグループは、実施のめどが立っていない役員改選をスムーズに進めるという目的のほかに、乳業メーカーとの乳価交渉を巡って組合運営への不信感があった。
県内酪農業の経営環境は、牛乳消費量の減少傾向や飼料価格の高騰などで厳しさが増している。
19年の県内の農家戸数は57戸で、11年の71戸に比べて2割(14戸)減少した。19年の生乳の生産量1万9906トンも、11年から15%減少している。現状の農家数では県内需要を満たせず、量販店には北海道産などの生乳が多く棚に並ぶようになった。
組合長解任の議論が加速したのは、19年秋に行われた県酪農農業協同組合と乳業メーカーとの乳価交渉だったという。農家は組合を通じて乳業メーカーに生乳を販売しており、この際の取引価格である乳価が引き上げられれば、農家の増産意欲につながる。
20年の乳価は1キロ当たり135円。毎年価格を交渉しているが、前年からの据え置きが続いている。関係者によると、昨年の乳価交渉に際し、メーカーから求められた計画書を組合が締め切りまでに提出できないといった不備が生じた。このためメーカーからの信頼を失い、関係者は「乳価が引き上げられなかった」と指摘する。
昨年6月の総会で役員改選が行われる予定だったが、内部の対立により役員改選の議案自体が取り下げられた。その後も役員改選に向けて各地区の代表を集めた推薦人会議を開いてきたが、現在の理事の再任を認めるかどうかで組合員間の溝は埋まっていない。
県とJA沖縄中央会は速やかな役員改選を指導するものの、現在も改選に至っていない状況だ。県内の酪農家は「若い農家もいて、増産に向けて取り組んでいる」と述べ、酪農振興に向けて組合運営の正常化を求めた。
(石井恵理菜)