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「八村世代」ルーキー チームの活力に キングスの牧隼利、ナナーダニエル弾(下)<ブレークスルー>


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(左から)ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で取材に応じる牧隼利、ナナーダニエル弾=13日

 今春に大学を卒業し、琉球ゴールデンキングスでプロ人生をスタートさせた牧隼利(はやと)(22)とナナーダニエル弾(23)。それぞれの持ち味を武器に、チームの戦力に厚みを加える。

■チームの主力に

 昨年12月に特別指定選手としてキングス入りした牧は、加入直後から物おじせずに周囲に声を掛ける姿が印象的だった。大学で主将としてチームをインカレ優勝に導き、試合中の積極的なコミュニケーションが「癖になっている」という。プレーではけがによる田代直希主将の離脱でフォワード陣が手薄になる中、「大学から地道に鍛えてきた」という線の太さを生かし、守備で大きく貢献した。

 「ピック&ロールの起点にもなれる」とハンドリング技術にも自信を持ち、今は石崎巧の状況判断力や体の使い方を参考にしながらさらに向上を図っているという。岸本隆一や並里成らガード陣の層の厚さもさることながら、今季は元日本代表の今村佳太や船生(ふにゅう)誠也も加入し、フォワード陣の競争も激しさを増すキングス。「プレータイムを勝ち取るため、リーダーシップを発揮してチームに貢献し、攻守でフィットしていきたい」と意気込む。

 197センチ、100キロの体格を誇るナナーは「他の選手よりフィジカルが強い」と自身の強みを語る。大学バスケで高い守備力で知られる青山学院大で鍛えたフットワークやリバウンド力でアピールする。

 一方、外国人ビッグマンがゴール下を席巻する現状のBリーグでは、プレーの幅を広げる必要性も痛感している。これまでセンターやパワーフォワードを担ってきたが「もともとやってきたポジションだけでは存在感を発揮しづらいのは分かっている。3番ポジション(スモールフォワード)もできる選手になりたい」と外角のシュート力やハンドリング技術の向上を見据える。

第3回FIBAU―17男子世界選手権に出場した日本代表。ナナーダニエル弾(選手の後列左から3人目)や牧隼利(同6人目)、現在NBAで活躍する八村塁(同2人目)ら豪華なメンバーが顔をそろえた=2014年(C)JBA

■八村世代

 向上心の尽きない2人には、強烈な刺激を受け続けている存在がいる。昨年6月、日本人として初めて米プロバスケNBAのドラフト1巡目指名を勝ち取った八村塁(明成高―米ゴンザガ大出、ワシントン・ウィザーズ所属)だ。2019―20のレギュラーシーズンは、ルーキーながら主力選手として13・5得点、6・1リバウンドの平均スタッツを記録。2年目までが選抜される若手のオールスターにも選ばれ、NBAで確固たる地位を築き上げた。

 八村は牧、ナナーと同級生で、2013年に日本が3位に入ったU―16アジア選手権や、米国に38―122で完敗するなど世界の壁の高さを痛感させられた14年のU―17世界選手権を共に戦った仲だ。親交は深い。「塁は変わったし、単純にすごいと思う」(牧)、「日々の努力を見てきたから、活躍は本当にうれしい」(ナナー)と声を弾ませる。

 ただ、同じ時代を歩むバスケットマンだからこそ、傍観者ではいられない。「彼は僕らに『すごい』と思われることを望んでる訳じゃないと思う。世界大会で同じ悔しさを味わった僕らも、もっと上を目指して頑張らないといけない」と気を引き締める牧。体格が似ているため、内外からゴールを射抜く八村のプレースタイルを参考にしているというナナーも「近い存在だからこそ、複雑な気持ちもある。3番ポジションとして定着していきたい」と背中を追う。

 八村がエースを務める日本代表入りも視野に、日々鍛錬を続ける牧とナナー。3人が同じユニホームを着て、また同じコートで躍動する日はそう遠くないかもしれない。
 (長嶺真輝)