苦境に立たされる障がい者事業所 売り上げ例年の1~2割 レクや地域交流も減少 


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新型コロナウイルス感染防止のため、一定の距離を空けて作業する利用者ら=20日、沖縄市の障害者福祉サービス事業所おきなわ工房

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、県内の多くの障害者就労支援施設が生産活動の縮小を余儀なくされ、生産収入が大幅に減少する事態に陥っている。施設は外部から作業を受注し、販売した商品の売り上げを利用者の賃金や工賃に充てるが、受注先の不振やイベントの中止が続く。先行きが見えない現状に、利用者や職員からは不安の声が上がっている。

 「商品の売り上げは例年の1、2割。あるいはゼロかもしれない」。沖縄市の障害者福祉サービス事業所おきなわ工房。田中寛施設長は、厳しい表情を見せる。生産活動の機会などを提供する「就労継続支援B型」と日常生活を支援する「生活介護」の2事業を実施し、現在14人の利用者が通っている。

 例年は福祉まつりや地域のイベントなどで製作した商品を販売している。今年は新型コロナの影響でイベントの中止が相次ぎ、売り上げが激減した。取引先の経営状況によっては、受注する作業の量が減少する可能性があり、施設の収益に影響が出ることも考えられる。「利用者が自らの手で製品を作り工賃をもらう楽しみや、社会参加の機会が減っている」と肩を落とす。

 就労継続支援事業には、利用者と雇用契約を結ぶ「A型」と、雇用契約を結ばない「B型」事業所がある。A型は雇用主の事業所が給与を支払い、B型の利用者の工賃は生産活動の収入から支払われる。事業所には、運営費や職業指導員の給与などに用いられる自立支援給付費が毎月給付される。通常、給付費を利用者の工賃に充てることはできないが、厚生労働省は「生産活動収入の大幅な減少も予測される」とし、A型・B型の事業所で給付費を利用者の賃金や工賃に充てることを可能と通知した。

 おきなわ工房では、入り口での検温や消毒、換気を行い、利用者同士の距離を空けながら作業を続けている。製品作りを担当する利用者の女性(43)は「コロナの影響がいつまで続くか不安だ。レクリエーションの機会もなくなり、地域の人や利用者との交流の機会も減った」とつぶやく。

 障がいのある人の社会参加や自立を支援するためにも、事業所の存在は必要不可欠だ。現在は給付費を使ってやりくりするが、売り上げの減少が長期間続くと運営はさらに厳しくなる。田中施設長は「利用者や家族、職員に身体的・精神的な不安を与えないよう、対策の模索を続けていく必要がある」と強調。拳をぐっと握り、気持ちを奮い立たせた。(吉田早希)