【識者談話】那覇軍港移設計画「SDGsに反する」 宮城和宏沖国大教授(経済学)


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宮城和宏氏(沖縄国際大教授)

 経済上、移設計画には問題がある。第一にキャンプ・キンザーの跡地開発をどうするのか具体的な話が見えていない。浦添市全体との関係、県全体の位置付けなど、グランドデザインが描けていない。

 さらに一番大きな問題は県が盛んに訴えるSDGs(持続可能な開発目標)の理念にも完全に反する計画となっていることだ。移設先には豊かなイノー(礁池)が広がる。本島南部の都市に近い場所で、これほど自然が残っている場所はない。計画は貴重な自然を埋め立てるだけではなく、今後の観光資源にも十分になり得て、経済上も価値がある場所をなくすことにつながる。単純に一部の業界や、首長の個人的な利益で計画を推進してはいけない。(利害関係のない)普通の県民、市民から広く意見を集約するべきだ。

 埋め立てて軍港を造るとキンザーの跡地開発自体にも影響が出る。軍港の近くにどのような企業が立地するのか。おのずと誘致する企業の選択肢が狭まれ、将来的な利益にも反映される。短期的かつ商業上の利益のみではなく、県民、市民の目線で生活の質や豊かさも考えるべきだ。

 環境資源の保全から波及する長期的な経済利益について、今のままの計画では見誤る可能性がある。コロナ禍を期に、過度な観光依存の危うさが指摘され始めた。

 これまでの開発方式を見直し、建設や土木、観光依存の経済から、地域内で経済を循環する構造への転換を進めるべきだ。
 (経済学)